日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンドリアン」の意味・わかりやすい解説
モンドリアン
もんどりあん
Piet Mondrian
(1872―1944)
オランダの画家。本名Pieter Cornelis M.。抽象絵画の創始者の一人で、新造形主義の主唱者。3月7日アメルスフォールトに生まれる。1892年アムステルダムの美術学校に入学し、かたわら敬虔(けいけん)なカルビニストの父親から精神的感化を受ける。初め印象主義、のちマチスの色彩に影響を受けたが、1911年パリでキュビスムに共鳴し、「樹(き)」の連作を始める。第一次世界大戦中故国でこの連作から抽象への探究を深め、15年水平、垂直の二線分による画面構成に達した。視覚を裏切らないこの二線分と、三原色および無彩色の配合とによって絵画からいっさいの再現的要素を追放し、生命力の根源を暗示する秩序と均衡を構成原理にしようとするのがその造形理論である。17年この理論(新造形主義)をもとにドースブルフらとデ・ステイルの運動をおこす。その単純明快な原理は抽象画の進展のみならず、建築、デザインの分野にも影響力をもった。19年パリに戻り、翌年理論書『新造形主義』を出版した。『赤、黄、青のコンポジション』(1921、デン・ハーグ市立美術館)はこの時代の代表作である。30年代にはさらに画面を単純化した『二つの線のコンポジション』(1931・アムステルダム国立美術館)を描く。38年ロンドン、40年ニューヨークに亡命。ここで従来の黒い線にかえて色面を細かく分節化したリズミカルな作品『ブロードウェー・ブギ・ウギ』(1942~43・ニューヨーク近代美術館)を描いた。44年2月1日ニューヨークで没。
[野村太郎]
『H・L・C・ヤッフェ解説、乾由明訳『モンドリアン』(1971・美術出版社)』