エリカ(読み)えりか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリカ」の意味・わかりやすい解説

エリカ
えりか
[学] Erica

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。英名ヒース(heath)の名でも知られる。ヨーロッパ西部および地中海沿岸に14種、熱帯東アフリカに2種、亜熱帯東アフリカに9種、南アフリカに605種の原種がある。高さは20センチメートルくらいのものから3メートルに及ぶものもあり、横枝が多数出てこんもりするものや直立してスギのようになるものがある。葉は線形および卵形で短い。花は壺(つぼ)状または筒状で、総状花序もしくは散形花序をつくる。花期は晩秋から春までで、多くは横向きまたは下向きに咲き、まれに上向きに咲くものもある。花色は白、桃、赤、紫、黄など豊富で、2色が混じるものもある。弁先は普通4裂し、雄しべは普通8本。

 ヨーロッパ系のものは耐寒性も強く栽培しやすいが、南アフリカの低地原産のものは花は美しいがやや半耐寒性のため保温を要する。重い土では根が深くまで伸びないので軽い土を用いる。また夏の高温による乾燥を避け、地温が上がりすぎないよう根際に覆いをする。灌水(かんすい)は適度にするとともに、南アフリカの品種については、6月と9月の多雨期の排水をよくする。大正初期にはカナリキュラタなど桃色赤色の小花が多数つく品種が流行し、品種改良が進んだが、いまは絶滅している。現在栽培されるのはウィルモレイのほか南アフリカ系のものが多く、弁先が赤く白色筒咲きのレギア、花の底が赤く白色上向き咲きのファスティギアタ、濃桃紅色で横向き咲きのビスカリアなどがよく栽培される。また一般にはジャノメエリカ(メランセラ)がよく栽培される。切り花、鉢植え、庭園樹とする。繁殖は実生(みしょう)でよく育ち、2年目くらいで咲くものがあり、3~4月および秋に挿木をしてもよい。

[川畑寅三郎 2021年4月16日]

文化史

花木として栽培されるエリカの多くは、南アフリカからもたらされた。その最大の貢献者は、キュー王立植物園から派遣されたイギリスの植物学者フランシス・マッソンFrancis Masson(1741―1805)で、彼は1772年と1786年の2回の南アフリカの採集旅行で88種のエリカを採集し、イギリスに送った。日本には、大正年間にジャノメエリカが初めて導入された。またエリカの根は堅いので、地中海沿岸産のエリカのエイジュ(E. arborea L.)からはパイプがつくられる。

[湯浅浩史 2021年4月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリカ」の意味・わかりやすい解説

エリカ
Erica

ヨーロッパから地中海沿岸,アフリカに分布するツツジ科の常緑低木の属で 500種もある。多くは葉が針形で輪生し,花は鐘形か壺形で,先が4裂し,8本のおしべがある。観賞用に栽培されるものにジャノメエリカ (クロシベエリカ) E. melantheraがある。これは南アフリカ原産で,耐寒性も強く,高さ 3mにもなる。淡紅色から濃紅色の花を密につけ,ヒース heathの名で切り花にして装飾に使われる。ただしヒースは本来は植物名ではなくエリカなどの生える荒原をさす語である。シラユキエリカ E. subdivaricataは,丈が高くならないのでおもに鉢植とされ,2~5月に鐘形の白い小花を開く。このほかケエリカ,シコウデン,エイカンなどがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報