エルツ山地(読み)エルツさんち(英語表記)Erzgebirge

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルツ山地」の意味・わかりやすい解説

エルツ山地
エルツさんち
Erzgebirge

ドイツチェコとの国境にある山地。名は「鉱石のある山」の意で,チェコ語でクルシュネホリ Krušné Hory,英語でオレ山地 Ore Mountains。西南西から東北東連なり,長さ約 160km,幅約 40km。南東部のボヘミア側では 600~750mの切り立った崖が連なり,北西部はゆるやな丘陵地となっている。最高峰はチェコ側にあるクリーノベツ Klínovec(ドイツ語でカイルベルク Keilberg。1244m)。結晶片岩(片岩)や強い変成作用を受けた古生代深成岩類からなる。侵食が進み,山容がなだらかなため,12世紀頃から開発が始まり,山地を刻む谷沿いに集落ができた。特に 12世紀後半にフライベルク付近で銀鉱が発見されてからは,スズ,鉛,ウランなど各種鉱物の採掘が活発となり,特にドイツ側のザクセン地方にはアウエ,アナベルクブッフホルツ,シュネーベルクなどの鉱山集落ができ,15~16世紀に最盛期を迎えた。中世から約 800年間続いた採掘,選鉱,精錬作業,先駆的な水管理の痕跡は集落に独特の文化的景観をもたらし,2019年世界遺産の文化遺産に登録された。古くから山地の両麓にはおもにドイツ人が居住していたが,第2次世界大戦後,チェコ側ではチェコ人大部分を占めるようになった。各地で豊富な木材を産する。テプリツェ付近などの褐炭産地のほか,カルロビバリなどの温泉地,数多くの冬のスポーツ施設といった観光資源にも恵まれている。

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