日本大百科全書(ニッポニカ) 「エロシェンコ」の意味・わかりやすい解説
エロシェンコ
えろしぇんこ
Василий Яковлевич Ерошенко/Vasiliy Yakovlevich Eroshenko
(1889―1952)
ロシアの盲目詩人。モスクワの盲人学校に学び、エスペラントを習得、のちロンドンに学んだ。1914年(大正3)東京にきて、日本語とエスペラントで民話、童話を発表、大杉栄(さかえ)、神近(かみちか)市子、中村彝(つね)らと親交を結んだ。19年、ソ連のスパイの嫌疑でウラジオストクに送還され、その後、北京(ペキン)に至り、魯迅(ろじん/ルーシュン)と交友を結び、その小説『あひるの喜劇』のモデルとなった。23年ソ連に帰国。エスペラントの自伝『わが学校生活の一ページ』(1923)、『孤独な魂のうめき』(1923)、日本語の短編小説『提灯(ちょうちん)物語』その他、多くの詩、短編などがある。それらのなかには、放浪の盲目詩人の孤独と哀愁を込めたものが多い。
[草鹿外吉]
『高杉一郎編『エロシェンコ全集』全3巻(1959・みすず書房)』▽『高杉一郎著『盲目の詩人エロシェンコ』(1956・新潮社)』