翻訳|endorphin
脳下垂体後葉に多く含まれる神経ペプチドの一種。α-,β-,γ-,δ-の4種があり,それぞれのアミノ酸配列は,脳下垂体前葉から分泌されるリポトロピンのアミノ酸配列の61~76番目(α-エンドルフィン),61~91番目(β-エンドルフィン),61~77番目(γ-エンドルフィン),61~87番目(δ-エンドルフィン)に相当する。これら4種のエンドルフィンのうち生理的に重要なのはβ-エンドルフィンで,モルヒネ受容体に作用してモルヒネ様鎮痛作用をもつ。すなわち,中枢神経系に作用してアセチルコリン,ノルエピネフリン,ドーパミンなどの神経伝達物質の放出を抑制することによって,鎮痛作用をあらわす。このほかの生理作用としては,成長ホルモンとプロラクチンの放出を促すことが知られている。類似物質にエンケファリン(メチオニンエンケファリンとロイシンエンケファリンの2種がある)があり,同様にモルヒネ様鎮痛作用があるが,これらはエンドルフィンも含めて内因性オピオイドあるいはオピオイドペプチドと総称される。
執筆者:川口 啓明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1976年に動物の脳内(視床下部、脳下垂体後葉)から相次いで抽出されたモルヒネ様ペプチドで、モルヒネを代表とする麻薬性鎮痛剤の受容体であるオピエイト(アヘン剤)受容体に特異的に結合する。内因性のモルヒネ様物質endogenous morphineからエンドルフィンと名づけられた。このうち、アミノ酸5個からなるペンタペプチドをエンケファリンといい、メチオニンおよびロイシン‐エンケファリンが単離されており、エンドルフィンもα、β、γの3種が同定されている。エンドルフィンは脳下垂体に存在しホルモン様の働きをしているものとみられるが、生理的意義はよくわかっていない。鍼(はり)麻酔の機序の一つがエンドルフィンにあることが証明され、話題となった。
[幸保文治]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…脳や脊髄にはモルヒネと特異的に結合する受容体があって,この受容体と結合する活性物質を探し求めた結果発見されたものである。メチオニンエンケファリン,ロイシンエンケファリン,β‐エンドルフィンなどがそれである。古くから痛みの治療に使われてきたはり(鍼)も痛みを和らげる脳の仕組みと無関係ではないように思われる。…
※「エンドルフィン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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