ドイツ生まれのスウェーデンの生化学者。ミュンヘン、ベルリン、ゲッティンゲン、ウュルツブルクの諸大学に学び、その間、W・H・ネルンスト、S・A・アレニウス、ファント・ホッフらと研究活動をした。1906年ストックホルム大学教授、生物化学研究所長。ヘキソキナーゼやジアフォラーゼの発見、インベルターゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼの研究、いくつかのビタミンの構造式の決定など、多くの業績をあげた。とくにハーデンが発見した酵母のアルコール発酵を促進させる補助因子について1923年以来研究し、精製してコチマーゼと名づけ、1935年にはその構造をピリジンアデニンジヌクレオチドであるとし、またコチマーゼが脱水素酵素反応の際の一般的な補助物質であることも指摘した。その後、O・H・ワールブルクがリン酸の一つ多い同様の物質を発見しTPN(トリフォスフォピリジンヌクレオチド)と名づけ(現在はNADP)、オイラーのものはDPN(ジフォスフォピリジンヌクレオチド)といわれた(現在はNAD)。1929年ハーデンとともにノーベル化学賞を受賞した。
[石館三枝子]
ドイツ生まれのスウェーデンの生化学者.ベルリン大学,ゲッチンゲン大学,ビュルツブルク大学に学ぶ.はじめ物理化学を研究し,1897年S.A. Arrhenius(アレニウス)の物理学助手,1900年,ストックホルム大学の物理化学の講師となる.その後,パリのパスツール研究所で研究し,1906年ストックホルム大学の化学の教授.その後,しだいに生化学の分野に移り,1929年同大学の生化学研究所所長となった.かれの研究は,無機,有機,生化学にわたっており,とくに酸化還元酵素の構造や作用機構,コチマーゼがピリジンアデニンジヌクレオチドであることの証明,ヘキソキナーゼやジアホラーゼの発見,インベルターゼやグルタミン酸デヒドロゲナーゼの研究など,酵素化学に関するすぐれた研究が多い.これらの業績により,1929年S.A. Harden(ハーデン)とともにノーベル化学賞を受賞した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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