日本大百科全書(ニッポニカ) 「オイラー・ケルピン」の意味・わかりやすい解説
オイラー・ケルピン
おいらーけるぴん
Hans Karl August Simon von Euler-Chelpin
(1873―1964)
ドイツ生まれのスウェーデンの生化学者。ミュンヘン、ベルリン、ゲッティンゲン、ウュルツブルクの諸大学に学び、その間、W・H・ネルンスト、S・A・アレニウス、ファント・ホッフらと研究活動をした。1906年ストックホルム大学教授、生物化学研究所長。ヘキソキナーゼやジアフォラーゼの発見、インベルターゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼの研究、いくつかのビタミンの構造式の決定など、多くの業績をあげた。とくにハーデンが発見した酵母のアルコール発酵を促進させる補助因子について1923年以来研究し、精製してコチマーゼと名づけ、1935年にはその構造をピリジンアデニンジヌクレオチドであるとし、またコチマーゼが脱水素酵素反応の際の一般的な補助物質であることも指摘した。その後、O・H・ワールブルクがリン酸の一つ多い同様の物質を発見しTPN(トリフォスフォピリジンヌクレオチド)と名づけ(現在はNADP)、オイラーのものはDPN(ジフォスフォピリジンヌクレオチド)といわれた(現在はNAD)。1929年ハーデンとともにノーベル化学賞を受賞した。
[石館三枝子]