日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーデン」の意味・わかりやすい解説
ハーデン
はーでん
Sir Arthur Harden
(1865―1940)
イギリスの生化学者。マンチェスターに生まれ、生地のオーエンズ大学を卒業。その後ドイツのエルランゲン大学で学位を取得し、帰国してマンチェスターに戻った。1897年にロンドンのジェンナー予防医学研究所に入ったころから細菌や酵母の発酵現象に関心をもつようになった。ヤングWilliam John Young(1878―1942)とともに、解糖の中間反応に糖の加リン酸過程が存在することを、果糖二リン酸(ハーデン‐ヤングエステルともよぶ)を使って実験した。この研究は、発酵の初期段階にリン酸が関与することを解明する端緒となり、当時承認されていた発酵のノイベルク説を訂正し、その後のマイヤーホーフたちによる解糖経路の解明に寄与することになった。また発酵には透析可能な低分子の補酵素(コチマーゼ、現在のNAD)が関与することについても研究し、1929年にオイラー・ケルピンとともにノーベル化学賞を受けた。1926年ナイトに叙せられ、1909年からフェローだった王立協会からは1935年にデービー・メダルを授与された。バッキンガムシャー、ボーンエンドで死去した。
[宇佐美正一郎]