オオイチモンジ(英語表記)Limenitis populi

改訂新版 世界大百科事典 「オオイチモンジ」の意味・わかりやすい解説

オオイチモンジ
Limenitis populi

ヨーロッパから日本まで連続して分布する旧北区の代表的な鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。日本では道南を除く北海道,北関東山地,長野県とその隣接山地に産し,北海道北東部と上高地付近の北アルプスには比較的多い。本州では高山チョウとされるが,実際は標高1500mあたりの河原や渓谷に多い。イチモンジチョウ類の中では大型種で,雄は開張約7.5cm,雌は8.5cm内外。雄の翅の表面は黒地に白紋と白帯でやや単純で,後翅橙色紋列もあまり目だたないが,雌は白紋と白帯が発達し,地色も青みを帯びて美しい。年1回,北海道では6月下旬,本州では7月中旬から発生する。雄は地上で吸水したり,動物の糞に集まったりするが,雌は樹木の花で吸みつする。卵は1個ずつ,ドロノキヤマナラシポプラなどの葉の先端に産みつけられる。幼虫は3齢になってから2~3週間たつと,枝先の葉で長さ1cm,直径2.5mmくらいの巣をつくり,枝先に固定し,その中に頭から潜りこみ,約8ヵ月の越冬に入る。5齢幼虫は6月ごろ葉の表面でさなぎになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオイチモンジ」の意味・わかりやすい解説

オオイチモンジ
おおいちもんじ / 大一文字蝶
poplar admiral
poplar white admiral
[学] Limenitis populi

昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。ヨーロッパから東アジアの北部にかけて広く分布し、日本では北海道の山地、本州では中部地方、関東地方のおおよそ1000~2500メートルの標高の高地に産する。はねの開張120ミリメートル内外。表面は黒褐色で前ばねに数個の白斑(はくはん)、後ろばねには中央を走る白帯がある。裏面では橙色(とうしょく)斑が現れ、表面よりさらに美しい。年1回発生し、6月下旬から8月中旬にみられるが、その最盛期は7月上旬から下旬である。成虫は花を訪れるほか、雄は吸水のために地上に降りることが多い。幼虫の食草はドロノキ、ヤマナラシなどのヤナギ科植物で、3齢幼虫で越冬するが、その際には食草の葉を食い切って長さ10ミリメートルほどの特異の越冬巣をつくり、その中に潜んでいる。

白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオイチモンジ」の意味・わかりやすい解説

オオイチモンジ
Limenitis populi

鱗翅目タテハチョウ科。大型のタテハチョウで,前翅の開張幅は雄で 66mm内外,雌で 80mm内外。翅表は黒褐色で,前翅には大きい白紋が散在し,後翅には中央を横切る1本の白帯がある。前・後翅とも外縁内側に橙色の細い波形紋が並ぶ。年1回初夏に発生し,高山地の渓流に沿った日当りのよい樹林にすみ,梢の上をゆるやかに舞う。幼虫の食草はドロノキ,ヤマナラシ。北海道,本州に分布し,本州では関東・中部山地の標高 1000~2500mにみられ,高山蝶の一つとされる。国外ではユーラシア大陸に広く分布する。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「オオイチモンジ」の解説

オオイチモンジ
学名:Limenitis populi

種名 / オオイチモンジ
目名科名 / チョウ目|タテハチョウ科(タテハチョウ類)
解説 / よく吸水します。樹液や動物のふんなどにも集まります。
体の大きさ / (前ばねの長さ)35~45mm
分布 / 北海道、本州(主に中部地方の山岳地帯)
成虫出現期 / 6~8月
幼虫の食べ物 / ドロノキ、ヤマナラシ

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世界大百科事典(旧版)内のオオイチモンジの言及

【高山蝶】より

…英語でAlpineといえば,タカネヒカゲ類のことを指す。 本州の高山チョウは,クモマツマキチョウ(イラスト),ミヤマシロチョウ,ミヤマモンキチョウ,オオイチモンジ,コヒオドシ,タカネキマダラセセリ,ベニヒカゲ,クモマベニヒカゲ,タカネヒカゲ(イラスト)の9種とされる。ミヤマシロチョウ,ベニヒカゲ,タカネヒカゲを除く残り6種はヨーロッパまで分布しているもので,日本では遺存種と見なしうるものである。…

※「オオイチモンジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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