改訂新版 世界大百科事典 「オガタマノキ」の意味・わかりやすい解説
オガタマノキ
Michelia compressa(Maxim.)Sarg.
神社の境内によく植えられている常緑高木。榊(さかき)として古くから尊ばれ,招霊(おきたま)が転じてオガタマの名になったともいわれている。
オガタマノキ属は近縁のモクレン属(オオヤマレンゲ,コブシ,ホオノキ等)と花は大変似ているが,腋生(えきせい)でめしべ群が柄を持ち,胚珠が4~18個であること等で容易に区別できる。オガタマノキはきれいな整形樹で高さ20m,胸高直径1.5mに達する。初春に葉腋に1個の花をつけ,強い芳香がある。葉は革質で倒卵状長円形で全体に少し波打ち,無毛。果実はモクレン属と同形の集合果。
日本,沖縄,台湾,フィリピンに分布する。日本では西南日本から太平洋岸沿いに房総半島まで分布しているが,中には神社から逸出して野生化したか自生かわからないものがある。沖縄以南のものは変異が大きく,日本本土のものとは別種にする考えもある。神社では,冬も葉を落とさない常緑樹が生命力の象徴として植えられるが,本種はその代表種の一つである。まっすぐに伸び上がる幹,花の香り,大きな紅色の種子(これを小香玉(おがたま)と呼んだともいわれる)等が好まれたのだろう。その他,薬用にも使われ,材は床柱等に利用される。近縁の中国原産カラタネオガタマM.figoは庭園樹として用いられ,きわめて強いバナナ様の香を放つ。東南アジア原産のキンコウボクM.champacaとギンコウボクM.× albaは熱帯,亜熱帯でよく見かける花木で,日本でもときに温室栽培されている。
執筆者:植田 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報