日本大百科全書(ニッポニカ) 「オシェロフ」の意味・わかりやすい解説
オシェロフ
おしぇろふ
Douglas D. Osheroff
(1945― )
アメリカの実験物理学者。ワシントン州のアバディーン生まれ。高校時代は、物理と化学の成績がよいふつうの生徒であった。スタンフォード大学に在学していた兄と比べられるのが嫌でカリフォルニア工科大学に進学し、そこでR・ファインマンの有名な学部生向けの講義を受ける。1967年に卒業、大学院はコーネル大学に進み、低温物理学研究所所長のD・リーと知り合う。リーの教育助手を務め、低温物理研究グループに参加するように勧められる。1973年に博士。大学院生だった1971年、絶対零度(-273.15℃)近くの極低温にしたヘリウムが「相転移」をおこす現象の兆しをとらえ、1972年に確認した。極低温で相転移をおこしたヘリウム3は「超流動」とよばれる特殊な状態になる。超流動状態では、原子や分子などのミクロの世界が従う量子力学の法則が、マクロな状態で実現する。コップの中のヘリウム3が、コップの壁を伝って外部に流れ出す現象が有名である。1972年から1982年までベル研究所で研究を進め、1982年から1987年までは同研究所で固体物理と低温物理の研究リーダーを務めた。1987年にスタンフォード大学教授。ヘリウム3の超流動の発見で、大学院生時代に指導してくれたリー、R・リチャードソンとともに、1996年のノーベル物理学賞を受賞した。
[馬場錬成]