高温超伝導(読み)コウオンチョウデンドウ(その他表記)high temperature superconductivity; high Tc superconductivity

デジタル大辞泉 「高温超伝導」の意味・読み・例文・類語

こうおん‐ちょうでんどう〔カウヲンテウデンダウ〕【高温超伝導】

通常超伝導体絶対温度約20度(セ氏マイナス約253度)以下超伝導状態となるのに対し、これよりも高い温度で起こる超伝導のこと。一般には、液体窒素沸点である絶対温度77度(セ氏マイナス196度)以上で起こるものをいう。
[補説]1986年に銅酸化物で初めて発見され、その功績によりベドノルツミュラー翌年ノーベル物理学賞を受賞した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高温超伝導」の意味・わかりやすい解説

高温超伝導
こうおんちょうでんどう
high temperature superconductivity; high Tc superconductivity

高い転移温度 Tcで起こる超伝導超伝導体電力の損失のない理想的な導体だが,通常の常伝導状態から超伝導に変わる Tcが,従来知られていた超伝導体では絶対温度 25K以下であり,応用に限界があった。しかし,1986年にヨハネス・ゲオルグ・ベドノルツカール・アレクサンダー・ミュラーにより,セラミックス一種であるランタンバリウム系の酸化物で,Tcが約 30Kになることが発見された。また東京大学の田中昭二のグループにより,これが真に超伝導であることが確認された。この発見以後,猛烈な勢いで物質探索が行なわれ,発見された高温超伝導体の最高 Tcは 100Kをこえた。これは,沸点が 77Kの液体窒素によって簡単に超伝導が実現できるということであり,応用上,画期的なこととされた。今日では送電用のケーブルなどで利用されているが,合成の難しさもあり普及は限定的である。銅系の物質のほかにも,近年では東京工業大学の細野秀雄らが発見した系の物質や,有機物系の物質も見つかっている。それらの Tcは 77Kよりも低いが,Tcが 25K以上であれば高温超伝導と呼ばれている。通常の超伝導体と同様に,クーパー対と呼ばれる電子の対が超伝導を担っているが(→BCS理論),対の生成機構は異なると考えられている。

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