超流動(読み)ちょうりゅうどう(英語表記)superfluidity

翻訳|superfluidity

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

超流動
ちょうりゅうどう
superfluidity

極低温の液体ヘリウムが,他の液体では通過できないような微小な径の毛細管を流れる現象。 1938年 P.L.カピッツァによって発見された。超流動ヘリウムの特徴には,(1) 管の両端の圧力差が無限小でも有限の速度で流れる (粘性なし) ,(2) このとき熱を運ばない (エントロピー輸送なし) ,(3) 第二音波 (熱の波) を伝える,(4) ビーカーに入れると器壁に可動膜をつくってはい上がり,器口を越えて低いほうへ流れる,などがある。 38年 L.ティサは超流動の現象論として二流体理論を提案した。量子流体論的な理解は L.D.ランダウにより深まった。超流動はボース=アインシュタイン凝縮による量子効果が巨視的に現れた現象である。 (→超流動ヘリウム3 , 超流動ヘリウム4 )  

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知恵蔵の解説

超流動

粒子の群れの粘りのない流れ。液体ヘリウムで見つかった。ヘリウム4(質量数4のHe)の原子は、スピンが整数値でボース粒子として振る舞うので、低温では多くの原子が1つの状態をとってひとつながりの波となり、粒子間の粘性が消える。粒子が個の性格を失い、巨視の量子現象が現れるのは超伝導と同じ。ヘリウム3(質量数3のHe)では原子2つが対をなしてボース粒子となり、同様の流れを見せる。この対は超伝導の電子対(クーパー対)に相当する。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

超流動【ちょうりゅうどう】

液体が粘性なしに流れる状態。液体ヘリウム4Heが2.17K以下(この状態をヘリウムIIと呼ぶ)で,微小な圧力差で細い毛細管内を自由に流れたり,また100分子層程度の薄い表面膜をつくって容器の壁をはい上り外へ流出する(表面流動)といった特異な現象を示す。これらの特性は,ヘリウムIIが,ヘリウムI(超流動転移温度以上の状態の液体ヘリウム4)と同じ性質をもつ常流動成分と,粘性0,エントロピー0の超流動成分との混合であるとして(二流体説)現象的に説明でき,また質量数4のヘリウムがボース粒子であることと深く関連する。なお,液体ヘリウム3も約2mK以下で超流動を示すことが知られている。
→関連項目カピッツァ極低温ランダウ

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世界大百科事典 第2版の解説

ちょうりゅうどう【超流動 superfluidity】

液体が粘性なしに流れる現象。ヘリウム4 4Heの液体である液体ヘリウム4は2.17K以下で,また4Heの同位元素である3Heの液体(液体ヘリウム3)は1mK以下でこの現象を示す。超流動状態では,液体はきわめて細い管の中を圧力差なしに流れ,また,第2音波や噴水効果など種々の奇妙な現象が観測される。 液体ヘリウム4に,液体ヘリウムIIと呼ばれる相が存在することはW.H.ケーソムらによって1927年に発見され,これが粘性0の超流動相であることは38年にP.L.カピッツァによって確かめられた。

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大辞林 第三版の解説

ちょうりゅうどう【超流動】

極低温において液体ヘリウムⅡでみられる、粘性が 0 であるような流れ。毛細管中を圧力差なしで流れ、コップの中に入れるとコップの壁を膜になって上昇し、外に流れ出る。 → 液体ヘリウム

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

超流動
ちょうりゅうどう

粘性がまったくなく、流れるときに渦の存在しない液体の状態をいう。このような現象は、液体ヘリウムについて2.17K(絶対温度)以下の低温においてのみ発見されており、ほかの液体ではみいだされていない。超流動を示す液体を超流体という。液体ヘリウムのなかで、2.17K以下で超流動を示すのは、天然に存在する質量数4の4Heである。これと同位元素である質量数3の3Heは、この温度では超流動を示さない。3Heは2.7ミリK(1ミリKは1000分の1K)以下で超流動を示すことが、1972年に発見された。
 超流動状態のヘリウムでは、奇妙な現象が観測される。図Aのように、2.17K以下の液体ヘリウムの中にバケツを入れると、液体ヘリウムは薄膜となってバケツの壁を伝わって上昇し、バケツの中に入り込む。バケツを液面より持ち上げると、ふたたび壁面を伝わってバケツの外に戻ってしまう。これは水などの常流体ではけっしておこらない現象である。図Bの(1)のように、底の抜けた毛細管の底部に炭素の粉を入れて脱脂綿で栓をする。これを超流動状態の液体ヘリウムに浸(つ)けて、外部から炭素粉の詰まっているところに光を当てると、毛細管の先端から液体ヘリウムの噴水が観測される。また同じ超流動状態の液体ヘリウムを、図Bの(2)のように毛細管を下向きにしたガラス容器に入れて、上部の液体ヘリウムにヒーターでわずかな熱を与えると、その液面が上昇する。
 この温度における超流動現象は、初めに述べた4Heにしかおこらない。これは、質量数が偶数の原子核をもつ4Heがボースの量子統計に従うため、ボース‐アインシュタイン凝縮の具体例として理解できる。このことは超伝導と同様に低温において観測される巨視的な量子現象の典型例であろう。このボース‐アインシュタイン凝縮は、偶数個の質量数をもった物質でしかおこらない。
 質量数3の3Heについても、2.7ミリK以下において超流動が発見されているが、これは奇数の質量数をもつ3He原子が二つで一つの対をつくって偶数の質量数をもつ準粒子となるためであり、超伝導における電子対と同様にBCS理論によって説明される。[渡辺 昂]
『佐々木祥介著『超流動・超伝導って何だろう――未知の世界に夢を追いかける科学者たち』(1988・ダイヤモンド社) ▽益田義賀著『超流動と超伝導』(1989・丸善) ▽渡辺昂著『超流動から超伝導へ』(1991・大月書店) ▽山田一雄・大見哲巨著『新物理学シリーズ28 超流動』(1995・培風館) ▽恒藤敏彦著『現代物理学叢書 超伝導・超流動』(2001・岩波書店)』

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世界大百科事典内の超流動の言及

【液体ヘリウム】より

…ヘリウムには,天然に存在するヘリウム44Heと,核反応を利用してリチウムLiから作られる同位体のヘリウム33Heとがあり,1気圧での沸点は4Heが4.21K,3Heが3.19Kで,また固化に必要な圧力はそれぞれ25.0気圧と28.9気圧である。4Heの液体,液体ヘリウム4は2.172K(0.0497気圧)で粘性が消失する超流動状態に転移する。超流動状態の液体ヘリウム4を液体ヘリウムII,これに対して超流動転移温度以上の液体ヘリウム4を液体ヘリウムIと呼ぶこともある。…

※「超流動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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