日本大百科全書(ニッポニカ) 「オショロコマ」の意味・わかりやすい解説
オショロコマ
おしょろこま
[学] Salvelinus malma
硬骨魚綱サケ目サケ科イワナ属の魚。朝鮮半島北部からベーリング海峡、アリューシャン列島を経て北アメリカのカリフォルニア州に及ぶ北太平洋沿岸に分布する。日本ではおもに北海道中央部の山岳地帯の渓流に分布し、また知床(しれとこ)半島、羊蹄(ようてい)山麓(さんろく)、積丹(しゃこたん)半島の小流、南後志(みなみしりべし)の千走(ちわせ)川上流および利尻(りしり)島と礼文(れぶん)島にも生息し、いずれも水温の低い源流域にすむ。背部の白点は細小、体側の朱紅色点は鮮麗。北方に分布するものはアナドロマス型(海洋型)でスモルト(銀毛化)となり、降海してかなり沖合いにまで回遊する。十勝(とかち)地方、然別(しかりべつ)湖にすむミヤベイワナは、ヘモグロビンの特性や鰓弓(さいきゅう)(えらの弓状の一片をいう)の内側にある鰓耙(さいは)とよばれる突起の数からオショロコマの分派とされるが、よい体成長と高い銀毛化の度合いからアナドロマス型のものとみられる。オショロコマの体長は河川型で30センチメートル、海洋型で40センチメートルを超す。2~3年で成熟し上流の平瀬に産卵する。アメリカ北部からヨーロッパ北部にかけて広く分布するホッキョクイワナ(アルプスイワナ)はきわめて近縁の魚種と考えられる。渓流釣りの対象としても価値が高い。
[久保達郎]