オスグッド・シュラッター病(読み)オスグッド・シュラッターびょう(その他表記)Osgood-Schlatter's disease

六訂版 家庭医学大全科 の解説

オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッターびょう
Osgood-Schlatter's disease
(運動器系の病気(外傷を含む))

どんな障害か

 脛骨粗面(けいこつそめん)膝蓋腱(しつがいけん)脛骨の接点の骨の隆起)が突出して痛みと腫脹が現れる病気で、成長期のスポーツ少年(10~15歳)に多く発症します。スポーツの種目としては、ジャンプキック、ダッシュの動作の多い、サッカー、バスケットボールハンドボール、陸上競技などによくみられます。

 発症のメカニズムは、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の牽引力が骨端線の閉じていない脛骨粗面に繰り返しかかること、骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかないため相対的に膝蓋腱を通して脛骨粗面にかかる力が大きくなることなどにより、骨端軟骨(こったんなんこつ)が損傷して脛骨粗面が隆起してくるものと考えられています(図40)。

合併損傷

 成長期終了後、脛骨粗面前方に遊離小骨片(ゆうりしょうこっぺん)が残り、疼痛やスポーツ障害を生じることがあり、遺残性オスグッド・シュラッター病と呼ばれる病態となることがあり、手術治療が必要となることがあります。

症状の現れ方

 脛骨粗面の隆起、突出が認められ、その部位を押さえると激痛を生じます。走る、飛ぶ、蹴る、しゃがんで立つなどの動作中や動作後に脛骨粗面の痛みがあります。通常は片側の発症が多いのですが、両側に生じることもまれではありません。

検査と診断

 スポーツで増悪する脛骨粗面の疼痛、圧痛、骨性の隆起があり、単純X線像側面で脛骨粗面の突出、不整、分離、小骨片などが認められること、MRIで脛骨粗面の浮腫や分離像が認められることで診断されます。

治療の方法

 原則として保存治療が行われます。活動の制限、消炎鎮痛薬の使用、シュラッターバンド装着、大腿四頭筋とハムストリングスのストレッチなどが組み合わされて行われています。再発を繰り返すことも多いのですが、たいていの場合には成長期の終了と同時に治るので心配は要りません。

 症状の程度とMRIの所見で、初期の場合にはストレッチと装具(シュラッターバンド)の併用でスポーツは禁止しません。進行期の場合にはジャンプやダッシュ、ボール蹴りの動作の制限を、進行の程度に応じて行います。

 遊離小骨片があり、疼痛が強くて階段昇降が困難な場合は、骨端線閉鎖前でも骨片摘出手術を行うほうがスポーツへの復帰は早いと考えます。

応急処置や予防法はどうするか

 局所のアイシングが大切です。予防のためには大腿四頭筋のストレッチ、シューズの底のクッション性をよくする、硬い床やアスファルト面の走行を減らすなどの工夫が必要です。ストレッチで症状が軽快しないときは、整形外科の受診がすすめられます。

関連項目

ジャンパー膝

一戸 貞文



オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッターびょう
Osgood-Schlatter's disease
(子どもの病気)

どんな障害か

 発育期(小学高学年~中学生)によく起こるけがです。ふともも前面の筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))はお皿(膝蓋骨(しつがいこつ))、膝蓋腱(しつがいけん)をとおして脛骨粗面(けいこつそめん)(下腿の少し突出した部位)についています。飛んだり、跳ねたり、ボールを蹴ったりすると、この筋肉が収縮し、脛骨粗面が強く引っ張られます。

 発育期には、この脛骨粗面に成長軟骨帯(関節近くにある軟骨で骨が伸びる部位)があり、前記運動を繰り返すことにより、この部位に炎症が生じます。

症状の現れ方

 脛骨粗面が突出し、その部位を押さえると痛みがあります。歩行ぐらいでは痛みはありませんが、スポーツをすると、その部位に痛みを生じます(図33)。

検査と診断

 前記の症状とX線検査(脛骨粗面の不整像)にて診断をします(図34)。

治療の方法

 歩行時にも痛みが強いような場合には痛みが軽減するまでスポーツを禁止しますが、通常は、運動前のストレッチング(主に大腿四頭筋)と運動後のアイシング(脛骨粗面の周囲を氷で10分程度冷やす)を十分に行い、スポーツ活動は症状に合わせて許可します。痛みが数カ月続きますが、保存的治療でほとんどが治ります。

 ごくまれに、骨が遊離して、膝をついた時の脛骨粗面の痛みが強いため、手術により摘出術を行う場合があります。

障害に気づいたらどうする

 整形外科専門医の診察を受け、X線検査などにより正確な診断をつけ、治療計画を立ててもらってください。

堀部 秀二


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 の解説

おすぐっどしゅらったーびょう【オスグッド・シュラッター病 Osgood-Schlatter Disease】

[どんな病気か]
 すねの骨(脛骨(けいこつ))の、膝(ひざ)のすぐ下に張り出している部分(脛骨結節(けいこつけっせつ))が腫(は)れて、痛みがおこる病気です。
 子どもの脛骨結節には、軟骨の成長線があり、外力に弱い部分ですが、そこには膝を伸ばす大きな筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))がはたらいており、つねに大きな力がかかっています。
 ジャンプ、ランニング、キックなどといった激しいスポーツをすると、くり返し脛骨結節に筋肉の牽引力(けんいんりょく)がはたらいて、細かい骨折様の変化(ひびなど)がおこり、痛みが生じます。
 11~15歳くらいの活発な男の子に多くみられる病気です。
[症状]
 膝の下が腫れて、押すと強い痛みがあります。膝を強く曲げるときや、けるなどして抵抗にさからって膝を伸ばすときに、痛みが強くなります。
 X線写真を見ると、脛骨結節が不規則な形になり、腫れているのがわかります。
[治療]
 膝の安静が基本です。スポーツを完全に中止すれば、約半数の子どもでは、骨の変化が改善されます。
 しかし、中途半端な中止では、修復する例は4%にすぎません。
 膝を強く曲げる運動を2~3週間は中止し、オスグッドバンドという装具や、消炎剤を含む軟膏(なんこう)などが用いられます。痛みがひどいときは、膝を一時的にギプスなどで固定します。
 生活指導もたいせつで、この病気が膝の使いすぎでおこることを本人や家族、スポーツの指導者が理解することが必要です。
 また痛みは、子どもが成長して、脛骨結節の軟骨の部分が骨になって(骨化して)くっついてしまえば、おこらなくなることも知っておく必要があります。
 運動を再開するときは、うさぎ跳び、ジャンプ、キック、スクワットなどをしないように注意します。
 運動後の膝を中心としたアイスマッサージも予防効果があります。

おすぐっどしゅらったーびょう【オスグッド・シュラッター病 Osgood-Schlatter Disease】

[どんな病気か]
 オスグッド・シュラッテル病ともいいます。10歳から15歳の発育期の子どもにみられるもので、運動時に膝蓋骨(しつがいこつ)の下部、脛骨(けいこつ)前面に痛みが出て、やがて突出してきます。
 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)が収縮し、膝蓋靱帯(しつがいじんたい)が引っ張られて骨の付着部から剥(は)がれるためにおこる骨端炎(こったんえん)、骨軟骨炎(こつなんこつえん)です。
[治療]
 しばらくスポーツを中止すれば治りますが、程度によっては手術も行なわれます(詳しくは「オスグッド・シュラッター病」を参照してください)。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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