改訂新版 世界大百科事典 「オハラ」の意味・わかりやすい解説
オハラ
John Henry O'Hara
生没年:1905-70
アメリカの小説家。ペンシルベニア州に医師の息子として育ち,ジャーナリストとして出発,のち小説家として立つ。しばしばヘミングウェーを思わせるハードボイルド風の文体で,1930年代に《サマラの約束》(1934),《バターフィールド8》(1935),《天国の望み》(1938)などの長編や,《医師の息子》(1935)をはじめとする短編集を次々に発表し,リアリズム作家として読者に迎えられた。ナイトクラブの歌い手を主人公とする《パル・ジョーイ》(1940)はミュージカル化され,映画化されて一般民衆に親しまれた。アメリカ社会の風俗のある面を忠実に記録することを使命と考え,第2次大戦後も多くの作品を発表しつづけたが,リアリズム文学の衰弱した60年代,70年代において評価は低くなった。しかし80年代のアメリカ社会の保守化に呼応するような新しいリアリズムの気運によって,オハラ再評価の兆しも見られるようになった。
執筆者:志村 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報