アツシ(読み)あつし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アツシ」の意味・わかりやすい解説

アツシ
あつし / 厚司

アイヌ語でオヒョウ(ニレ科の植物)の意で、転じてオヒョウの内皮〔靭皮(じんぴ)質〕から繊維をとり、アイヌ機(アツシカルベ)で織った堅い風合いをもつ厚地の平織物。近年はアットゥと表記されることが多い。染色しないで自然褐色のまま用い、アイヌ独特の模様を切り付けと縫い取りで表す。元来、アイヌ民族が平常着や晴れの衣服に用いた。北海道では擦文(さつもん)文化期の竪穴(たてあな)住居跡から布片が出土し、この時期に本土から機織技術が伝わったとされ、その技術が発展をみず温存されている。現在日高胆振(いぶり)地方でわずかに生産されている。また1882年(明治15)奈良の麻布商上田新八が、アツシにヒントを得て厚地の木綿でつくったのが、今日一般にみられる厚司である。非常にじょうぶで、無地染め、大名縞(じま)に染め、職人、漁夫などの仕事着や前掛けに用いられてきた。

[角山幸洋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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