オビラプトル(読み)おびらぷとる(英語表記)oviraptor

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オビラプトル」の意味・わかりやすい解説

オビラプトル
おびらぷとる
oviraptor
[学] Oviraptor philoceratops

竜盤目獣脚類(亜目テタヌラ類(下目)コエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル類Maniraptoraオビラプトロサウルス類Oviraptorosauriaオビラプトル科Oviraptoridaeオビラプトル亜科Oviraptorinaeに属する恐竜モンゴルの白亜紀後期、約7700万年前の地層から産出した雑食恐竜(肉食説と草食説がある)。属名の意味は「卵泥棒」。これは1920年代にアメリカ自然史博物館ゴビ砂漠探検隊が最初にこの恐竜の骨格発見したとき、当時プロトケラトプスProtoceratopsのものと思われていた卵と巣があった場所の何センチメートルか上位であったことと、あごのつくりが卵割りに都合がよいと考えられ卵を食べたと思われていたことからであった。ところが、1990年代にアメリカ自然史博物館隊が従来プロトケラトプスのものと思われていた卵と同種類の卵中にオビラプトルの胚(はい)の化石を発見した。また、それ以前にゴビ砂漠の中国側でも1920年代に観察されたものと同様な産状をカナダ・中国調査隊が発見し、これはオビラプトルの親が卵を守っているのではないかという別解釈を予測していたので、そのことが裏書きされた。さらにその後、巣の中の卵に覆いかぶさって抱卵中と考えられる産状で、オビラプトル類シティパティCitipati成体がモンゴルで発見されるに至って、オビラプトルは自分の卵を守っていたとする見解は決定的となった。この類の卵は巣の中で2個ずつ対(つい)になっているが、2本の卵管から1個ずつ産んだらしい。温血で有毛であろうと推測される。ただし、オビラプトルのあごの構造を調べ直したその後の研究でも、下顎(かがく)の中ほどにのどの入口があって下顎中央が広がり、口蓋(こうがい)に2本の骨性突起があるので、そこで卵を割るのに好都合とわかった。やはり、少なくとも食餌(しょくじ)の一部は卵であったらしい。あごを前後に動かし食べていたという。くちばしが捕食鳥類のような鉤(かぎ)型ではないので厳密な意味での肉食ではないし、半水生の貝などを食べるには頭骨が軟弱すぎるなど諸説がある。口蓋のつくりや頭骨の一つ一つが空気をたくさん含むようになっているので、鳥類に似る。発達したとさかは視覚上のディスプレー装置で、角質の鞘(さや)で覆われていたのであろう。肩や腕の骨は頑丈で、指の鉤づめはドロマエオサウルス類に似る。敵に立ち向かうこともできたし、俊足を生かして逃げ切ることもできたであろう。全長約2.5メートル、体重約33キログラムと推測される。

[小畠郁生]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オビラプトル」の意味・わかりやすい解説

オビラプトル
Oviraptor

爬虫類竜盤目獣脚亜目オビラプトル科の小型恐竜。白亜紀後期,東アジアと北アメリカに生息した。短い頭,歯のない強力なをもつ。顎は曲がり硬い物をかみ砕くことができた。鼻の上には骨質の隆起がある。両手は力強く,3本指には物をつかむのに便利な大きな爪があった。最初の骨格がプロトケラトプスの巣の真上で発見(1923)されたので,卵獲者と考えられた。

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知恵蔵 「オビラプトル」の解説

オビラプトル

獣脚類恐竜で全長約2m。二足歩行で、頭上のとさか状の突起とくちばしが特徴。1923年に米国のゴビ砂漠探検隊が、草食恐竜のプロトケラトプスのものと思われる卵の巣の上10cmの位置で、オビラプトルの化石を発見。卵を食い荒らしている時に砂嵐に襲われたと推測され、卵どろぼうの意味の属名がつけられた。88年、内モンゴルのバイマントフで同様な産状が観察され、親が卵を守っていたとされた。

(小畠郁生 国立科学博物館名誉館員 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉プラス 「オビラプトル」の解説

オビラプトル

白亜紀後期に生息した竜盤類獣脚類の恐竜。全長約1.5メートル。食性は不詳だが雑食と見られる。鳥のような抱卵の習性があったとされる。

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