ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オヨノ」の意味・わかりやすい解説
オヨノ
Oyono, Ferdinand Léopold
[没]2010.6.10. カメルーン,ヤウンデ
カメルーンの作家,政治家。フランス語で執筆。若い頃からキリスト教会関係の仕事をしていたが,のちにフランスに留学し法学や行政学を学んだ。『ボーイの一生』Une Vie de boy(1956)は,植民地支配と文明化の使命の内実を暴露した日記形式の作品。「黒いフランス人」としてのアイデンティティに疑問をもって死んでいく総督府お抱えの召し使いを主人公に,フランスによる同化政策の偽善を訴えている。『老人と勲章』Le Vieux Nègre et la médaille(1956)は,フランス政府から勲章をもらった老人が最後には政府の手で投獄されるという顛末を描いている。これらパリ時代に書かれた 2作で植民地での白人の偽善,残忍さ,冷酷さなどを戯画化し,その成功によりモンゴ・ベティと並ぶフランス語圏アフリカ文学の代表的作家としての地位を得た。作品はオランダ語,ドイツ語,チェコ語,ノルウェー語,英語などに訳されている。代表作にはほかに,『ヨーロッパからの道』Chemin d'Europe(1960)がある。この作品は,宗教団体に身を寄せることでフランス行きの夢をかなえる暗愚をもてあそばれる男の物語である。1950年代にはパリで舞台・テレビ俳優としても名を広めた。1960年に帰国後は政治家として外務大臣や国際連合のカメルーン代表,ベルギーやリベリアの駐在大使なども務めた。(→アフリカ文学)
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