ベティ(読み)べてぃ(その他表記)Mongo Beti

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベティ」の意味・わかりやすい解説

ベティ
べてぃ
Mongo Beti
(1932―2001)

カメルーンの小説家。カトリック系ミッションスクールに学びながら、在学中に信仰を拒否して放校処分を受け、公立高校に転校、のちにフランスに留学、エクサン・プロバンス大学とパリ大学で学んだ。反政府的言動のため祖国に帰れず、しばらくフランスのリセ教鞭(きょうべん)をとっていたが、のちに帰国して書店を開いた。初期の小説『残酷な町』(1954)、『ボンバの気の毒なキリスト』(1956)、『使命は終わった』(1957)、『奇蹟(きせき)の王』(1958)などで、異質な部族慣習をもつアフリカでのキリスト教伝道の限界と矛盾を、コミカルなタッチで風刺した。ほかに反植民地主義の評論集や、小説『ペルペチュと不幸な習慣』(1974)、『ルーベンスを想起せよ』(1974)、『ある道化師の滑稽(こっけい)な敗北』(1979)、それに80年代の連作ギョーム・イスマエル・ドゼワダマの2人の母』(1983)、『ギョーム・イスマエル・ドゼワダマの復讐(ふくしゅう)』(1984)などがある。また、1978年に隔月刊雑誌『黒人、アフリカ人』を創刊し、91年まで作家たちに発表の場を提供した。

土屋 哲]

『砂野幸稔訳『ボンバの哀れなキリスト』(1995・現代企画室)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ベティ」の意味・わかりやすい解説

ベティ
Mongo Béti
生没年:1932-

カメルーン出身の作家。1951年に留学生として渡仏して以来,在仏。その小説はすべて生地南部カメルーンを舞台とする。当初より植民地における搾取の問題に注目,1950年代に4作を発表し,軽妙なタッチで白人植民者とフランス支配下のアフリカ人社会を風刺しつつ,自己の独立と尊厳を求める若いアフリカ人人物像を造形した。白人宣教師の活動を痛烈に風刺した《ボンバの哀れなキリスト》(1956)は,危険文書としてフランス,カメルーンで発禁とされた。一方,革命的独立運動〈カメルーン人民同盟〉の海外メンバーとしても活動した。独立後10年余の沈黙の後発表した評論《カメルーンの強奪》(1972。カメルーン政府の要請によりフランスで発禁)では,フランスに後援されたアヒジョ政権の恐怖腐敗政治を激しく非難,《ペルペチュ》(1974)では独立後の社会の荒廃を描いた。《リメンバー・ルーベン》(1974),《道化のぶざまな失墜》(1979)の2作では,フランス支配初期から独立後に至るカメルーン社会の変化を描きつつ,新たな解放への可能性を探っている。79年以来雑誌《黒い人民・アフリカ人民》を主宰
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベティ」の意味・わかりやすい解説

ベティ
Beti, Mongo

[生]1932.6.30. フランス領カメルーン,ムバルマヨ
[没]2001.10.8. カメルーン,ドゥアラ
カメルーンの作家。本名 Alexandre Biyidi-Awala。エザ・ボト Eza Botoの名でも作品を発表。フランス語で執筆。カメルーンのヤウンデ高等学校卒業後,奨学金を得てフランスに渡り,エクサンプロバンス大学で文学を専攻,のちパリ大学に移り卒業。1959年以降フランスに定住。作品は植民地下でのカメルーン人の心理状態と社会状況を主題とする。主著『愛もなく憎しみもなく』Sans Amour et sans haine(1953,エザ・ボト名),『残酷な町』Ville cruelle(1954,エザ・ボト名),キリスト教伝道の限界や矛盾を諧謔的に風刺した『ボンバの哀れなキリスト』Le Pauvre Christ de Bomba(1956),1950年代カメルーンを舞台に,植民地風土に生きる主人公の疎外感を描く『使命完了』Mission terminée(1957,サント・ブーブ賞),『奇跡の王』Le Roi miraculé(1958),『道化の不様な失墜』La Ruine presque cocasse d'un polichinelle(1979)など。(→アフリカ文学

ベティ
Betty, William Henry West

[生]1791.9.13. シュルーズベリー
[没]1874.8.24. ロンドン
イギリスの俳優。ベルファストで子役としてデビュー,「ヤング・ルシアス」と称され,1804~08年ロンドンでハムレットをはじめシェークスピア悲劇の大役を演じ,絶大な人気を得た。その後は不振で,24年に引退。

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