日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
オルタナティブ・スクール
おるたなてぃぶすくーる
alternative school
従来型の学校教育活動とは異なる学習プログラムを実施する学校の総称。従来型の学校教育は、以下の四つの特徴をもつ。
(1)試験成績のよしあしによって生徒を区分けするシステム
(2)教科書やワークブック中心の学習
(3)教師の権威の無条件承認、および対話よりも教師からの質問中心の授業
(4)学級教師ではない専門教育機関が定めた規則、儀式、基準と一致した価値の尊重
これに対し、こうした従来型の教育活動の特質から一つまたは二つ以上抜け出した教育計画をオルタナティブ・プログラムとよび、これを実施する学校をオルタナティブ・スクールとよぶ。
一般的には、以下のような学校の総称として用いられている。
(1)フリー・スクールfree school 子供の受ける教育内容についての発言権を保持したいとする親によって設置される私的な学校。管理の仕組みとしてのテストはせず、教育課程(カリキュラム)もつくらず、規律保持の手段としての賞罰も用いない。
(2)フリーダム・スクールfreedom school 1950年代、アメリカの公立学校における黒人の隔離や教科書その他の教材の提供に伴う人種差別に対抗して設置された中等学校。しかし、54年にアメリカの連邦最高裁判所は公立学校における白人・黒人の分離教育を違憲とする判決を下した。この「ブラウン判決」を受け、60年代には人種統合学校化の流れのなかでしだいに消滅していった。
(3)オルタナティブ・スクールalternative school 標準的な学校で提供される教育に適合できない生徒へのプログラムで授業を行う学校。このなかには、身体的、精神的、情緒的にハンディキャップをもつ生徒に適合した学校や、芸術的・知的英才児の教育を行う学校などがある。
(4)オルタナティブ・パブリック・スクールalternative public school 公立学校体制のなかで、自由入学制度や独自のカリキュラムの実施を認められた学校。アメリカにおけるマグネット・スクールmagnet school、チャーター・スクールcharter schoolなどをさす。マグネット・スクールは、成績優秀な者に対して、学力指導を優先した公立初等・中等学校であり、施設も教育内容も優れ、資格のある生徒しか入学させない選抜制度をしいている学校である。チャーター・スクールは、公立学校でありながら、州政府や地方行政機関から独立し、教師や親などにより特別に認可された団体が運営する学校である。通常この種の学校は、公立学校制度のなかでも親や地域社会の要求に応えるように運営されている。
[神山正弘]
『平原春好編著『学校参加と権利保障――アメリカの教育行財政』(1994・北樹出版)』▽『ジョー・ネイサン著、大沼安史訳『チャータースクール――あなたも公立学校が創れる アメリカの教育改革』(1997・一光社)』