フリー・スクール(読み)ふりーすくーる(英語表記)free school

翻訳|free school

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリー・スクール」の意味・わかりやすい解説

フリー・スクール
ふりーすくーる
free school

子供の自主性と発言権の尊重理念とする私的な学校。

 アメリカでは、19世紀までのこの用語の意味は「私立無償の慈恵学校」をさすものであった。1960年代以降は、社会活動団体やカウンター・カルチャー・グループ(対抗文化集団)によって設立された短命の教育施設をさしたが、これらは旧来の学校の権威を否定し、教育上の賞罰を廃止するなど、脱学校を特徴としていた。

 日本では、不登校登校拒否児童・生徒のために、学校外での学習や交流活動を組織・支援する施設をさす。いわば、既存の学校にかわる新たな学校形態の可能性として、個人や団体が維持設置する教育施設をさすもの、あるいはこれらの施設が自称するものとなっている。1985年設立の東京シューレ(奥地圭子(おくちけいこ)主宰)は、日本におけるこの種の施設の先駆けとなり、『不登校新聞』の発行など活発に活動する。

 不登校・登校拒否などの激増につれて、これらは子供の学校不適応が問題ではなく、学校側の不適応が問題とされ始めた。こうした動きのなかで、1990年代ごろから全国各地にフリー・スクールが誕生した。また同時に、教育委員会の管轄する教育研究所や教育相談所などで不登校児の学校外学習の機会を提供し、その学習をもって、正規の学校の学習時間とみなすなどの措置も広がった。これらは、社会が当然視してきた正規の学校による学習内容、規律、児童生徒像などの改変を求めているものと考えられる。自宅で学習し、学校に行かずに自己成長しようとするホーム・スクーリングhome schoolingが正規の制度とされていない日本の現状のなかで、こうした取組みは応急的、臨時的な性格をもっているとはいえ、将来的には既存の制度からフリーな学校、新しいタイプの学校群が登場する素地をなすであろう。

[神山正弘]

『大田堯著『なぜ学校へ行くのか』(1995・岩波書店)』『清水満著『生のための学校――デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界』(1996・新評論)』『増田ユリヤ著『「新」学校百景――フリースクール探訪記』(1999・オクムラ書店)』『リンダ・ドブソン、相沢恭子著『Q&Aたのしいホームスクール――学校・不登校・フリースクールではない第4の選択』(2000・現代人文社)』『学習研究社編『学校が合わないときの居場所探し――不登校からのフリースクールガイド 2000~2001年版』(2000・学習研究社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリー・スクール」の意味・わかりやすい解説

フリースクール
free school

従来の学校教育の枠にとらわれず,子供の自由と自主性の尊重を原則とする学びの場。1920年代の進歩主義教育運動の流れのなかで,子供の要求を徹底的に尊重する自由主義教育を主張したイギリスの教育家アレクサンダー・S.ニールが創設し,世界でいちばん自由な学校といわれたサマーヒル・スクールがその典型。ドイツのシュタイナー学校,アメリカ合衆国のクロンララ・スクールなどもこの流れをくむ。日本では,ニールやルドルフ・シュタイナーなどの思想を学んだ人たちが既存の学校教育とは異なる教育を目指して設立したものと,深刻化した不登校に対応するために親たちの手で任意に設立されたものとの二つの流れがあり,1980年代後半から急増した。非営利組織 NPOの事業によるもの,社会教育施設が場を提供しているものなど,さまざまな形態がある。文部科学省はフリースクールに通った日数,インターネットで自宅学習した日数を学校の出席日数として認めた。2001年に NPO法人フリースクール全国ネットワークが設立された。

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