改訂新版 世界大百科事典 「お好み焼」の意味・わかりやすい解説
お好み焼 (おこのみやき)
鉄板焼の一種。油をひいた平らな鉄板に水溶きした小麦粉を流し,そこへ肉,魚介,野菜その他,好みの材料を加え,焼きながらたべる。江戸時代から行われていた文字焼(もじやき)/(もんじやき)の高級化したもので,遊戯料理の性格をもつ。文字焼は,味をつけた小麦粉のたねを杓子で鉄板上にたらし,〈いろは〉などの文字を焼いてみせたところからの名で,《柳多留》九十四篇(1827)には〈杓子程筆では書ケぬ文字焼屋〉の句が見られる。明治以降の文字焼屋はほとんど子ども相手の商売になり,駄菓子屋などが宿先で焼かせるものや,屋台をひいて売り歩くものがあった。後者は干しエビ,刻みスルメその他種々の材料を用いて即席料理風のものもつくり,これがのちに高見順の小説《如何なる星の下に》に見られるような,成人を対象とするお好み焼になっていく。この屋台の文字焼屋は,太鼓をたたいて流し歩いたため〈どんどん焼〉の名も生じた。また,文字焼をなまった〈もんじゃ焼〉の語もひろく分布しており,大阪などでは〈一銭洋食〉とも呼ばれた。なお,お好み焼に近いものに〈たこ焼〉があるが,これはくぼみをつけた鉄板,または銅板を用いる点で,文字焼よりはむしろ今川焼の系統に属するものである。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報