改訂新版 世界大百科事典 「カイエビ」の意味・わかりやすい解説
カイエビ (貝蝦)
clam shrimp
claw shrimp
Caenestheriella gifuensis(=Estheria gifuensis)
二枚貝に似た殻をもつ淡水産の小型甲殻類。鰓脚(さいきやく)亜綱貝甲目カイエビ科に属する。殻は長さ11~14mm,高さ7~10mmくらい,褐色あるいは黄褐色をしている。背側に左右の殻を結ぶちょうつがいがあり,前部に両殻を結ぶ閉殻筋がある。殻の表面には殻頂を中心とした16内外の同心円状の成長線が見られる。体はこれら2枚の殻でほとんど完全に包まれる。1対の無柄の複眼をもち,第2触角は2枝に分かれ,これを用いて遊泳する。胴部には,ほとんど同じ形をした葉状の10~32対の胴肢があり,それらの内葉が起こす水流で食物小粒をとらえる。尾節は鉤(かぎ)状をしており,胴肢を掃除するのに適している。後期発生はメタノープリウスを経過し,変態する。干上がるような浅い池沼や水田などに,初夏のころ,ホウネンエビなどとともに出現する。最初,岐阜県で発見された日本固有の種である。カイエビ科には,ほかに本州産のヤマトヒメカイエビLimnadia nipponica,近畿以西産のトゲカイエビLeptestheria kawachiensisなどがある。
執筆者:蒲生 重男
カイエビ類の化石
カイエビ類のキチン質の殻(背甲)は,化石として淡水成層中で発見されることがあり,古生物の専門家はカイエビ類のことをエステリアEstheriaと通称することがある。化石カイエビ類の殻は1cm前後か,それ以下で,同心円状の成長線のほかに,古型のものでは殻頂から数本の放射状の隆起線をもつものもある。古生代デボン紀前期以降の淡水~汽水成層中から発見され,古生代石炭紀と中生代後期にはとくに多かった。第三紀層からは不思議なことに産出しない。東アジアの大陸部では標準化石として役だち,日本でも白亜紀前期の関門層群中に多産するところがある。
→鰓脚類
執筆者:藤山 家徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報