改訂新版 世界大百科事典 「カイヨア」の意味・わかりやすい解説
カイヨア
Roger Caillois
生没年:1913-78
フランスの批評家,思想家。ランスに生まれ,青年期をパリに送って文法学と宗教学を修得。一時ブルトンに誘われてシュルレアリスムに身を寄せたが,その非科学性にあきれ,〈超現実〉よりも〈聖現実〉を選ぶことを決意,ただちにG.バタイユ,レリスらと組んで社会学研究会Collège de sociologieを結成した(1938)。同年,カマキリを観察対象とした《神話と人間》でいよいよ〈聖〉の解明に乗り出したカイヨアは,その後も祭りの形態,動物の本能,夢の世界などを通して幻想の根拠をつきとめる努力をつづけ,ついに〈聖〉の中心に旋回してやまない〈遊〉の観念に着目,不朽の《遊びと人間》(1958)と《戦争論》(1963)を著した。一方,《詩のごまかし》(1944)や《文学の思い上がり》(1948)で徹底的な現代文芸批判を展開,行為と主張を一致させるサン・ジョン・ペルスこそ詩人の見本であるとの結論に達した。このような多岐にわたる問題意識はその後も衰えることなく,みずから〈対角線の科学〉と名付けた方法論によって次々に結実,とりわけイメージの起源を偶発的鋳型性に求めた《自然と美学》(1962),およびイメージの進化は対称性との闘いにあるとした《反対称》(1973)にみごとに凝縮された。
執筆者:松岡 正剛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報