日本大百科全書(ニッポニカ) 「カドミウムエロー」の意味・わかりやすい解説
カドミウムエロー
かどみうむえろー
cadmium yellow
硫化カドミウムCdSあるいは硫化亜鉛カドミウム(ZnCd)S系固溶体からできている黄色顔料。製法は、カドミウム塩や亜鉛の塩(硫酸塩、硝酸塩などを用いる)を湿式で混合、この水溶液中に硫化ナトリウムNa2S、場合によっては硫化バリウムBaSを加え、生成した沈殿を洗浄、乾燥後、500~600℃で加熱する。この加熱により硫化カドミウム、硫化亜鉛カドミウムはともに高温変態のα(アルファ)型(ウルツァイト型)となる。最近は低温変態のβ(ベータ)型(ジンクブレンド型)のものも発表されている。当然β型は500℃以上でα型に転移するため、色調の変化を生じるが、プラスチックへの分散はα型よりよいとされ、かつ、通常の用途における耐熱性は十分とされている。組成はペール(Zn0.26Cd0.74)S、ライト(Zn0.12Cd0.88)S、ミドルCdSで、Zn2+の置換量が少なくなるにつれ、紫外部からの吸収が、しだいに強く可視部に食い込むようになり、色調は黄緑に寄ったペールから、やや橙(だいだい)味黄のミドルへと変化する。カドミウムと亜鉛の比、焼成の際の温度、時間およびその雰囲気によって、粒子の大きさ、粒度分布、形状が変化し、それによりかなり色調が影響を受ける。用途は、大部分がプラスチック用で、ほかに塗料、印刷インキ、ゴム、絵の具、一部はセラミックスの分野で、陶磁器の上絵の具に使用される。
[大塚 淳]