改訂新版 世界大百科事典 「カネタタキ」の意味・わかりやすい解説
カネタタキ (鉦叩き)
Ornebius kanetataki
直翅目カネタタキ科の昆虫。低木上にすむ小型のコオロギの1種。雄はチンチンチンと鉦をたたくように鳴くので,この名があり,秋の鳴く虫の一つとして親しまれている。関東以西の本州,四国,九州や中国大陸に分布する。体長は9~12mm。成虫は夏の終りから秋にかけ,山野の低木や庭木,生垣上にふつうに見られる。体は扁平で,雄の頭胸部は茶褐色,腹部は黒褐色をしているが,前胸背板や翅を除き,全身灰褐色の鱗片で覆われている。頭部は小さく,続く前胸背板は台形でよく目だち,その後縁は湾曲している。雄のみ短い前翅があり,その大部分は発音器で占められている。後翅はない。脚は短く,とくに後脚はあまり発達しない。雌は翅がなく,雄よりやや大きい。産卵管は槍状で,尾角よりは短い。尾角は雌雄ともに体に比して長い。つかまえると,しばしば尾角や後脚を脱落させるが,これはとくに武器をもたないこの虫の一種の防御行動と考えられる。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報