日本大百科全書(ニッポニカ) 「カマドドリ」の意味・わかりやすい解説
カマドドリ
かまどどり / 竈鳥
ovenbird
鳥綱スズメ目カマドドリ科に属する鳥の総称。同科Furnariidaeは3亜科34属約215種からなり、北はメキシコから南はパタゴニアまで、広く中央・南アメリカに分布している。セアカカマドドリFurnarius rufusなどがつくる粘土製の巣が、かまどDutch ovenに似ていることから、和名と英名がつけられた。南アメリカのスペイン語系の人々は、この鳥を「パン焼き」el horneroとよんで親しんでいる。全長12~28センチメートルで、雌雄ほぼ同色。暗褐色、黒色、灰色など全身じみな色をしており、下面はいくぶん淡い。ほとんどの種が、旧世界のツグミ類やヒバリ類のように、森林やサバナの地上で昆虫をおもに採食するが、湿地の林やサバナで樹上生活を送り、枝に巣をかけるもの、樹幹で昆虫をとるもの、海岸で海藻についた甲殻類を食べている種もある。セアカカマドドリは、雨期の12月から翌年の2月に、雨で柔らかくなった粘土と草を混ぜて、長さ約30センチメートル、幅約20センチメートル、高さ約25センチメートルのかまど形の巣を雌雄が共同でつくる。壁の厚さは約4センチメートルあり、風雨にさらされて壊れるまでに2~3年かかるが、巣は毎年新しいものがつくられる。ほかに、地面に穴を掘って巣をつくるグループもあり、樹上の巣もきわめてじょうぶである。1腹の卵数は普通2~5個(最多9個)で白いものが多い。なお北アメリカでovenbirdというのは、スズメ目アメリカムシクイ科の1種ジアメリカムシクイSeiurus aurocapillusをさし、草で編まれたかまど形の巣を地上につくるが、カマドドリ科とは類縁が離れている。
[竹下信雄]