改訂新版 世界大百科事典 「カマドドリ」の意味・わかりやすい解説
カマドドリ (竈鳥)
ovenbird
スズメ目カマドドリ科Furnariidaeの鳥の総称。中央・南アメリカに広く分布し,中央アメリカに24種(そのうち特産種は5種),南アメリカに約210種が生息する。これらの種は海岸の岩礁地帯から湿地,農耕地,草地,森林,高山の岩場まで,さまざまな環境に適応している。全長約8~28cm。雌雄は同色同大,少数の種を除き,胸腹部は白色ないし淡褐色,頭上,背,翼上面,尾は黄褐色,褐色,赤褐色などで,全体として褐色のじみな羽色をしている。体型はオニキバシリ類に似て,湾曲した細いくちばしをもつもの,深い燕尾型の長い尾をもつもの,ヨシキリ類やツグミ類に似ているものなどがある。どの種も生態は詳しく調べられていないが,これまで知られている限りでは,狭い出入口が横についた壺型の巣をつくる特徴がある。
系統分類学的に十分研究されているわけではないが,次の3亜科にまとめられている。
カマドドリ亜科は5属37種。地上かそれに近いところに生活する種が多く,低い枝上,地上,地下,岩の間などに泥や粘土を用いて壺型の巣をつくる。セアカカマドドリFurnarius rufusは枝上,建物のひさしの上,塀の上などに泥と草の細い茎や葉を混ぜて,直径25cm前後の堅い壺型の巣をつくって繁殖する。オナガカマドドリ亜科は17属113種。樹上生で,小枝や葉などを用いて樹上に巣をつくる。アレチカマドドリPhacellodomus rufifronsは数つがいないし十数つがいが集まってとげのある小枝を用いて大きな巣をつくり,その中に各自の巣を組み込んで繁殖する。マユカマドドリ亜科は12属66種。森林生で,樹上や森林で生活し,地下や樹洞などに巣をつくる。ホオジロカマドドリXenops minutesは土の壁に横穴を掘り,その奥に産卵する。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報