から‐に
(原因、理由を意味する
助詞の「から」に
格助詞の「に」が付いたもの) 活用語の
連体形を受け、全体で接続助詞的に働く。
① 原因がきわめて軽いにもかかわらず結果の重いことを示す。…ばっかりで。それだけの原因で。
※
書紀(720)斉明七年一〇月・
歌謡「君が目の 恋
(こほ)しき舸羅儞
(カラニ) 泊
(は)てて居て かくや恋ひむも 君が目を欲
(ほ)り」
※石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「昔し魯連といふひと談笑せしからに秦の軍自ら却きぬ」
② さして重くない原因によって、ある結果がただちに生ずることを示す。原因の結果に対する支配力は①よりやや弱いが、時間的関係が強い。…と共に。…と同時に。…や否や。
中古以後の
用法。
※後撰(951‐953頃)夏・一九五「うつせみの声聞くからに物ぞ思我も空き世にしすまへば〈よみ人しらず〉」
③ 原因、結果を順接の関係において示す。…ゆえに。逆接の意が感じられる例もあるが、それは反語によるものである。
※
源氏(1001‐14頃)
帚木「などかは女と言はんからに世にある事の公、私につけて、むげに知らず至らずしもあらむ」
④ 逆接の関係において、原因、結果を示す。
中世に現われ、その後見られない。
近世にはこの用法は「てから」「てからが」の形となる。
※宇治拾遺(1221頃)三「
神宮といはむからに、
国中にはらまれて、いかに奇恠
(きくゎい)をばいたす」
[
語誌](1)順接
条件を示す場合、中世末期には「に」を伴わない形で用いられるに至る。→
助詞「から(二)」。
(2)
上代、中古の例では「から」の体言性がかなり強いが、中世に現われた逆接用法に至って体言性は失われたと考えられる。
(3)近世以降、
文末におかれて「てからに」の形で用いられることがある。→
てからに
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「からに」の意味・読み・例文・類語
から‐に
[連語]《準体助詞「から」+格助詞「に」》活用語の連体形に付く。上代では格助詞「の」「が」にも付く。
1 …だけの理由で。…だけで。「聞くからに強そうな名前だ」
「ただ一夜隔てし―あらたまの月か経ぬると心迷ひぬ」〈万・六三八〉
2 (「からには」の形で)…である以上は。…する以上は。「言ったからには最後までやりとおす」→からは
3 …と同時に。…とすぐに。
「初春の初子の今日の玉箒手に取る―揺らく玉の緒」〈万・四四九三〉
4 前の事柄を理由・原因として順当な結果へと続ける意を表す。…ので。…ゆえに。
「うちわたす遠方人に言問へど答へぬ―しるき花かな」〈新古今・雑上〉
5 (助動詞「む」に付いて)前の事柄を理由・原因として順当でない結果へと続ける意を表す。…からといって。
「いかに大宮司ならん―、国にはらまれては見参にも参らぬぞ」〈宇治拾遺・三〉
[補説]5の用法は中世だけで、近世になると「てから」「てからが」の形に変わる。
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