春の鉢植え草花としてきんちゃくの形をした花が奇妙でもあり,美しくもあるので親しまれているゴマノハグサ科の一年草。キンチャクソウ属Calceolariaは中央アメリカ,南アメリカのアンデスの山系に300種も分布しているが,そのうちのキンチャクソウC.corymbosa Ruiz et Pav.とC.crenatiflora Cav.との交配雑種に,他の数種が交雑されて,現在のカルセオラリアが育成されたと考えられている。交配はすでに19世紀前半にイギリスで始まり,20世紀になって大輪系の園芸品種グランディフロラGrandifloraが作出された。その後ドイツで小輪多花系ムルチフロラMultifloraも作出され,現在みられる多様なカルセオラリアが育成された。
草丈は20~30cm,葉は広卵円形で大きく対生し,しわと毛が多い。花は黄色または紅色で上唇弁は貝殻状で小さく,下唇弁は袋状で,無地単色のものもあるが,大小無数の斑点があるものが多い。萼片は4枚,おしべは2本,めしべは1本あり,果実は熟すと先端が裂けて微細な種子がこぼれ出る。種まきは9月上旬,ピートモスと川砂を半々に混ぜた用土で平鉢にまき,鉢底から吸水させて覆土をしない。苗は1~2回植えひろげて小苗を小鉢にとり,逐次鉢替えを行う。冬は凍らない程度に保温してやれば越冬できるが,3~4月に開花させるには加温して10~15℃を保つ。
執筆者:浅山 英一
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ゴマノハグサ科(APG分類:キンチャクソウ科)の一年草または多年草。和名キンチャクソウ。この属の植物は南アメリカおよびニュージーランドに約200種以上自生するが、現在栽培されるのはC. crenatiflora、C. corymbosaなど数種の原種から交雑育成されたもので、半耐寒性一年草として扱う。このほかに、ヨーロッパの花壇などで利用される多年生のC. integrifoliaなどがある。開花期に花茎を多数分枝し、高さ30~40センチメートルになる。葉は対生し卵形。花は上唇が小さく、下唇が大きくスリッパ状になる。花色は赤、橙(だいだい)、黄の単色か、不規則な斑点(はんてん)が入るものがある。開花期は温室やハウス栽培で3、4月である。系統別に大輪のヒブリダ・グランディフローラ系、中輪多花性のヒブリダ・マルチフローラ系、小輪多花性のルゴサ・ヒブリダ系に大別され、一般にはマルチフローラ系品種が多く栽培される。8月ごろ播種(はしゅ)し、温室やハウスで栽培し、早春の鉢植え、4月ごろの花壇植えなどにする。
[鶴島久男 2021年7月16日]
APG分類では、Calceolariaほか2属がゴマノハグサ科から独立してキンチャクソウ科となった。
[編集部 2021年7月16日]
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