ドイツの劇作家G・カイザーの三幕戯曲。1914年発表、17年フランクフルト初演。百年戦争中包囲されたカレーの町を救うため6人の市民が犠牲となってイギリス軍に下った史実に基づき、ロダンの同名の群像に触発されて書かれた。名誉や戦争より市民の営為の結実たる港を重くみる点に反戦の意識がみられる。しかし作者の主眼は社会的思想から離れ、もっぱら、多数のために己を滅却する新しい人間像、それへ向かっての個人の倫理的成熟過程を描出することにある。構成の建築学的緊密さ、台詞(せりふ)にあふれる情念、理念を求める激しい熱情のゆえに、この戯曲はカイザーのみならずドイツ表現主義演劇にとっての記念碑的作品となった。
[吉安光徳]
『新関良三訳『カレーの市民』(『近代劇全集9』所収・1927・第一書房)』
…作品にはストリンドベリ,ウェーデキント,シュテルンハイムらの影響が指摘される。旧約聖書の英雄的存在を性欲のとりことなる女に変身させた《ユダヤのやもめ》(1911)で頭角を現し,〈新しい人間〉を追求する反戦劇《カレーの市民》(1914)の発表によって国際的に名を知られるようになった。その後,第1次大戦の経験にもとづいて,既成の道徳や人間の脱個性化を風刺する問題作をつぎつぎと発表し,〈思考遊戯者Denkspieler〉と呼ばれた彼の独得な作風は,1920年代の舞台を席巻した。…
…13世紀以降フランス・イギリス間の交易中継地として発展し,ハンザ同盟都市となった。百年戦争中,イギリス軍に占領された(1347)が,このとき6人の市民がイギリス王エドワード3世の前に出頭して他の市民を救った話は有名で,ロダンの彫刻(《カレーの市民》)にもなっている。1558年ギーズ公が奪回,16世紀末一時スペイン領となるが,1598年以後フランス領となった。…
※「カレーの市民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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