カイザー(読み)かいざー(英語表記)Georg Kaiser

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイザー」の意味・わかりやすい解説

カイザー(Georg Kaiser)
かいざー
Georg Kaiser
(1878―1945)

ドイツ劇作家マグデブルクの商家に生まれ、商社員として南アメリカに行ったこともある。1917年『カレー市民』の初演に大成功を収め、たちまち表現主義ドラマの第一人者となり、20年代の舞台を風靡(ふうび)する。生涯に七十数編の戯曲を残した多産家である。わが国では築地(つきじ)小劇場によって紹介された。その作品は戦争、資本主義体制、機械文明に対して鋭い批判を提起するが、彼の問題意識はおおむね社会的思想にまでは至らず、個人の倫理の領域に解消する。「頭脳遊戯者」の名のとおり、正確な計算に基づく緊迫した場面構成力と、「電文体」ともよばれた簡潔な文体を駆使した、まさに職人芸的作家である。彼の主知主義と批判精神は初期のブレヒトに影響を与えた。ナチスの時代に亡命し、スイスで不遇のうちに没す。ほかに『朝から夜中まで』(1916)、『平行』(1922)、『ガス』三部作(1918~20)など。

[吉安光徳]

『岩淵達治・近藤公一編『ドイツ表現主義3』(1971・河出書房新社)』


カイザー(皇帝)
かいざー
Kaiser ドイツ語

皇帝を意味するドイツ語ラテン語のカエサルCaesarに由来する。国王の上にたつ広域世界の支配者をさし、オットー1世以降歴代の神聖ローマ皇帝がこの称号を用いた。1806年神聖ローマ帝国が滅んでから、ドイツでカイザーを称したのは、オーストリア皇帝と1871年以後のドイツ皇帝だけである(いずれも1918年まで)。なおわが国では、カイザー(カイゼル)はとくにドイツ帝国最後の皇帝ウィルヘルム2世をさすことも多い。

[木谷 勤]


カイザー(Wolfgang Kayser)
かいざー
Wolfgang Kayser
(1906―1960)

ドイツの文芸学者。シュタイガーと並ぶドイツ解釈学派の代表者。『ハルスデルファーの音画』(1932)によって詩の形態に着目する研究に着手、作品外の事象にこだわる実証主義精神史立場との絶縁を図る。その成果は『言語芸術作品』(1948)に結実し、作品の内在解釈の道を開く。ほかに『グロテスクなもの』(1957)、『ドイツ詩史』(1958)など。

[平井 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カイザー」の意味・わかりやすい解説

カイザー
Kaiser, Georg

[生]1878.11.25. マクデブルク
[没]1945.6.4. アスコナ
ドイツ表現主義の代表的劇作家。初め風刺喜劇を書いていたが,1917年歴史劇『カレーの市民』の上演により注目された。次いで一連の社会的テーマの作品,『朝から夜中まで』 (1916出版,17初演) ,『珊瑚』 (17) ,その続編『ガス・1部』 (18) ,『ガス・2部』 (20) の「ガス3部作」で,現代社会のメカニズムのなかにひしがれる人間の姿を描き出した。登場人物の個性的属性をはぎ取ってタイプ化し,モノローグなどの手法を用いているのが特徴。ナチスの弾圧により 38年スイスに亡命。

カイザー
Kayser, Heinrich Gustav Johannes

[生]1853.3.16. ビンゲン
[没]1940.10.14. ボン
ドイツの物理学者。シュトラスブルク大学およびベルリン大学で学ぶ。 H.ヘルツの後任としてボン大学物理学教授 (1894) 。分光学者として知られ,C.ルンゲと共同で,元素スペクトル中の一連の輝線の間に成り立つバルマー公式を拡張し,1883年カイザー=ルンゲの公式を打立てた。またそれに基づいて,地球大気中にヘリウムが存在することを突止めた (95) 。真空中の波数の単位カイザーは彼にちなむ。

カイザー
Keiser, Reinhard

[生]1674.1.12. トイヘルン
[没]1739.9.12. ハンブルク
ドイツの作曲家。ライプチヒの聖トマス教会付属学校に学び,1694年頃ハンブルクに居を定め,以来ハンブルク・オペラの中心人物として活躍。みずから劇場を経営し,監督,管理,指揮のかたわら,100曲をこえるオペラを作曲。 1728年ハンブルク大聖堂の合唱長をつとめ,カンタータ,オラトリオなど宗教音楽をも作曲。ドイツ国民オペラを興隆させた功績は大きい。

カイザー
kayser

分光学で用いられる真空中での電磁波の波数の単位。記号はK。 1K は 1cm 中の波の数。 1K=1 cm-1 で単位は cm-1 が使われることが多い。単位名は H. G. J.カイザーの名にちなむ。

カイザー
Kayser, Wolfgang

[生]1906.12.24. ベルリン
[没]1960.1.23. ゲッティンゲン
西ドイツの文学史家。 1950年ゲッティンゲン大学教授。主著『言語芸術作品』 Das sprachliche Kunstwerk (1948) 。

カイザー
Kaiser

皇帝を意味するドイツ語。ロシア語のツァーリと同じくローマのユリウス・カエサルに由来。日本では,特にドイツ皇帝ウィルヘルム2世をこう呼ぶ。

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