カワゴンドウ(読み)かわごんどう(英語表記)Irrawaddy dolphin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワゴンドウ」の意味・わかりやすい解説

カワゴンドウ
Orcaella brevirostris; Irrawaddy dolphin

クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科カワゴンドウ属。イラワジイルカともいう。体長は2~2.5m。出生体長は推定約 1m。背部から体側にかけて濃い灰青色または黒色を呈し,腹部淡色である。噴気孔は1個で頭部正中線上にある。頭部は丸く嘴 (くちばし) はないが,口のまわりが口唇のように盛上がる。頸椎骨が遊離しているため頭部が自由に動き,咽喉部には細かい多数の縦皺が入る。背鰭 (せびれ) は小さく,体の中央よりやや後方に位置し,先端は鈍くやや後方に曲る。背鰭から尾鰭の中央にかけてキール (稜状の隆起) がある。胸鰭は大きく体長の7分の1くらいで幅があり,旋回や静止などの動きに対応しよく動く。歯は上顎骨に 17~18対,下顎骨に 15~18対あり,歯冠がやや大きい。群れは通常6頭以下であるが,15頭以上の場合もある。行動はあまり活発ではない。繁殖期は6~8月と推測されている。魚類,イカ類および甲殻類を捕食し,魚の群れに対して,口から水を吐き威嚇する。熱帯亜熱帯海域の,インド洋ならびに太平洋の沿岸域,汽水域,淡水域に生息する。北オーストラリアおよびニューギニアからベンガル湾にかけて分布し,エイヤーワディ川,マハカム川等の流域にも出現する。オーストラリアのサメ刺網筌漁業 (せんぎょぎょう) などで混獲されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「カワゴンドウ」の意味・わかりやすい解説

カワゴンドウ (河巨頭)
Irrawaddy dolphin
Orcaella brevirostris

歯クジラ亜目マイルカ科の哺乳類。ベンガル湾から北オーストラリア,インドネシア,インドシナ半島などの沿岸や河川に生息する丸い大きな頭をもつ小型イルカ。イラワジ川メコン川,マハカム川などでは河口から500~1000km上流にまで分布し,その場所で一生を終えるらしい。体長2~2.2m。背面青黒色で,体側は淡く,腹面は白い。背びれは小さく低いが,胸びれは大きい。歯は上下左右それぞれ12~17本ある。7個の頸椎が全部遊離している点は原始的な特徴である。本種はシロイルカに近い種とする考えもあったが,今では否定されている。飼育記録によれば,5月に交尾し7月初めに96cmの子を正常出産した。子は7ヵ月で餌を食べ始めた。自然では3~10頭の群れをなし,主として魚を食べるが,甲殻類も捕食するといわれる。イラワジ川の漁夫は,本種は漁を助けると信じ,殺すのを好まない。インドネシアやラオスでも民俗信仰により保護されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワゴンドウ」の意味・わかりやすい解説

カワゴンドウ
かわごんどう / 河巨頭
Irrawaddy dolphin
[学] Orcaella brevirostris

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目カワゴンドウ科に属する小形ハクジラ。イラワジイルカともいう。ベンガル湾からニューギニア、インドネシアにかけての熱帯、亜熱帯の沿岸や河口域にすむ。大きな河川にもさかのぼる。体長2メートルぐらいで、頭部に吻(ふん)がなく皮膚は柔らかい。全身灰色で斑紋(はんもん)がなく、腹側は淡い。スナメリに似ているが、本種には背びれがある。各列十数本の小さい歯をもち、小魚を食べる。ボルネオ産の本種数頭をジャカルタ水族館で飼育し繁殖に成功している。

[西脇昌治]


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