ヒョウに似るが,四肢が細長く走行に適した食肉目ネコ科の哺乳類。主としてアフリカの平原に分布するが,北アフリカ,アラビア半島,パレスチナからインド半島中・北部までごく少数が生息する。体長112~150cm,尾長60~80cm,体高70~90cm,体重35~72kg。体,四肢が細長く,頭は小さく額が高い。四肢のつめは他のネコ類と異なり鞘に引き込めることができない。体は黄褐色ないし明るい灰色の地に丸い小黒斑が密に並ぶ。斑紋はヒョウなどの斑紋と異なり,中央部が淡くない。
半砂漠地帯ややぶの多い草原などに,雄はふつう単独で,雌は数頭の子といることが多い。小群でいるのはたいてい雌と子であるが,2~4頭の雄の成獣であることもある。おもに日中活動し,主として小型ないし中型の有蹄類を狩る。インドではブラックバックやアクシスジカ,アフリカではトムソンガゼルやグラントガゼルである。またシマウマなどの大型草食獣やノウサギやホロホロチョウなども食べる。狩りは高速で追跡する方法で,待伏せやごく近距離までへの忍び寄りは行わない。草を食べている草食獣へ70~100mくらいまでまったく身を隠そうともせずに足ばやに近づき,突然最高速で追い,一気に獲物を倒す。獲物との距離が200mほど離れていても狩りに成功することもある。チーターは全力走行に移ると約2秒で時速72kmとなり,(記録された)最高速度は113kmだが,追跡距離が500m以上になると追跡をあきらめる。子を連れた雌は毎日獲物を1頭は倒すが,単独でいる成獣は2~5日に1頭を狩る。
行動圏の大きさは獲物の多少,よい水場の有無などの生息場所のよしあしにより変化するが,ふつう50~130km2である。チーターは明確ななわばりをもたないが,小群でいるものは互いに出会うのを避け,生活を営む地域を尿でマークする。このような行動は,雄や雌が繁殖状態にあるかどうかなどの情報を得るのにも役だつ。一般にチーターは個体間での衝突はないが,発情した雌の周辺に集まった雄どうしの間でときどき闘争が起こる。
チーターの繁殖は地域によってさまざまなようで,赤ん坊が見られるのは東アフリカで1~8月,ナミビアで11~1月,ザンビアで11~3月である。妊娠期間は90~95日で,1腹1~8子,ふつう3~5子である。子は体重150~300gで,4~11日で目が開き,3~6ヵ月で離乳する。さらに1ヵ月半で幼獣は母親について歩くようになり,獲物の殺し方などを教わる。生後1年半くらいで母親から離れ,2歳近くで性成熟する。飼育下での寿命は19年に達する。性質は温和でよくなれ,昔はインドなどでは飼いならしてレイヨウの猟に使った。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。アフリカのサハラ砂漠と熱帯降雨林を除く全域から小アジアを経てインド北部まで分布し、サバナや荒れ地に生息する。体長1.2~1.5メートル、尾長60~80センチメートル、体重45~90キログラム。体は灰色から褐色で、黒色の小斑紋(はんもん)を密に散布する。つめは鋭くなく、鞘(さや)に引っ込めることができない。普通は雌雄の1対か雌と成長した子の家族で生活するが、3~4頭の雄だけのハンティンググループや、雌を探す雄グループも観察されている。雌だけの群れは知られていない。昼行性で、狩りは朝と夕方に行う。獲物は小形ないし中形の有蹄(ゆうてい)類で、インドではブラックバックやアキシスジカ、アフリカではガゼル、イボイノシシ、シマウマである。ねらった獲物に身をかがめて接近し、それから急に突進して追いすがり、獲物を殺す。地上でもっとも速く走る動物といわれ、走り始めて2秒後には時速72キロメートルに加速することができ、最高時速は113キロメートルである。出産は東アフリカでは普通、雨期および雨期があける3~6月で、妊娠期間90~95日ののち、1産1~8子を産む。寿命は飼育下で18年以上。インドの王侯は本種を飼いならし、レイヨウ狩りに用いた。そのためシュリョウヒョウ(狩猟ヒョウ)の別名がある。
[今泉忠明]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 小学館の図鑑NEO[新版]動物小学館の図鑑NEO[新版]動物について 情報
…体色も変異が著しく,灰色のコロコロ(パンパスキャット)Felis colocolo,灰褐色のジャングルキャットF.chaus,褐色のマライヤマネコF.planiceps,金色をおびた褐色のアフリカゴールデンキャットF.aurata,赤褐色のヤガランデF.yagouaroundiまであり,白色型のライオンP.leoや黒色型のヒョウ(クロヒョウ)P.pardusなども知られている。褐色や黒色の斑紋をもつものが多く,トラのような縞模様,ジャガーP.oncaなどのような梅花状の大きな斑紋,チーターAcinonyx jubatusなどのような黒点があり,それぞれまったく別のもののように見えるが,黒点がつながって縞模様や梅花状斑紋が形成されたものである。ネコ類の体色と斑紋は,獲物に接近する際のカムフラージュに役だつと考えられている。…
…またなにかに興味をそそられているときには尾の先端部をくねらせ,心持ちよい場合にはのどをゴロゴロ鳴らし,相手に親しみを示すときには尾を垂直に立てて腰部またはしりをすりつける。このような表情はネコ族に共通なだけでなく,チーター族ともほとんど共通している。
[行動圏]
ネコは単独生活者で,一定のなわばり(テリトリー)を占有する。…
※「チーター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新