ガッコウチュウ(その他表記)Gnathostoma

改訂新版 世界大百科事典 「ガッコウチュウ」の意味・わかりやすい解説

ガッコウチュウ (顎口虫)
Gnathostoma

線形動物ガッコウチュウ科に属する一群センチュウ線虫)。各種の肉食動物やブタ,イノシシなどの胃,食道に寄生するが,ヒト終宿主でないため,ヒトに感染した場合には幼虫のまま体内を移行することが多く,皮膚爬行症または皮下の移動性腫張の原因となる。日本で従来この原因となるものはユウキョクガッコウチュウ(有棘顎口虫)G.spinigerumのみとされていたが,輸入ドジョウの生食によって発症した例の中にはゴウキョクガッコウチュウ(剛棘顎口虫)G.hispidumによるものもある可能性がある。ユウキョクガッコウチュウの場合,成虫は体長約3cmで,頭部には8~11列の環状に並ぶ棘(きよく)をもった頭球がある。ネコおよびイヌ胃壁腫瘤を形成し,頭部を粘膜内に穿入(せんにゆう)して寄生する。第1中間宿主ケンミジンコの類で,この中で第2期幼虫となり,次いで感染ケンミジンコが第2中間宿主の淡水魚や両生類に摂取されると,約1ヵ月で第3期幼虫となる。この幼虫は,魚類,両生類,爬虫類鳥類,哺乳類など広範な種類の動物の中で感染力を保持することができる。すなわち,種々の動物が待機宿主paratenic hostとなりえ,ヒトもその中に含まれる。ヒトへの感染は,おもに,カムルチーライヒーなどライギョの生食の際,筋肉内に薄い膜におおわれて存在する第3期幼虫を摂取することによっておこる。治療としては,手術による虫体の摘出があるが,すべての場合に適用できるものではない。かつて,中国の長江揚子江)流域において日本人の間に多発した長江浮腫も,本虫によるものである。
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百科事典マイペディア 「ガッコウチュウ」の意味・わかりやすい解説

ガッコウチュウ(顎口虫)【ガッコウチュウ】

元来はネコ,イヌなどを終宿主とし,その胃壁に寄生するガッコウチュウ科の線虫であるが,ヒトが第2中間宿主のライギョなどを生で食べると,2〜3mmの幼虫が成虫にならずに,皮下などに迷入し,時おり痛み,発赤,はれを起こし,それが移動する。有効な薬はまだない。
→関連項目センチュウ(線虫)

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