キクイモ(英語表記)Jerusalem artichoke
Canada potato
Helianthus tuberosus L.

改訂新版 世界大百科事典 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ
Jerusalem artichoke
Canada potato
Helianthus tuberosus L.

北アメリカ原産のキク科多年草。地下茎がふくらんでできた塊茎が家畜の飼料とされる。また,イヌリンを多く含んでいるのは有名で,果糖アルコール発酵,あめなどの原料になり,戦前に食用として日本に輸入されたものである。最近ではあまり栽培されていないが,かつては栽培を奨励されたこともあった。いもにたくさん芽があり,繁殖力が盛んで,野生化していることも多く,一度畑に植えると絶えさせることが困難なくらいである。現在でも北海道には多い。キクの花に塊茎があるところからキクイモの名がつけられた。茎は直立し,高さ1~3m,葉とともに粗毛が生えていてざらつく。茎の下部の葉は対生し,上部の葉は互生する。葉柄には翼がある。葉身は長卵形で先がとがり,3本の葉脈が目だつ。葉縁にはまばらに鋸歯がある。秋に茎上部が分枝し,数個の花をつける。花は同属のヒマワリの花に似ているが小さく,直径6~8cmくらいの頭花である。周辺部の舌状花は長さ3~5cm,淡黄色で,中央部の筒状花黄褐色である。果実は長さ5~6mm,上部に毛が生えている。本種によく似たイヌキクイモH.strumosus L.も北アメリカ原産である。塊茎が小さいか,またはないことが特徴である。全体として一回り小さく,またほっそりした感じである。キクイモの舌状花が頭花あたり10~20個であるのに対し,イヌキクイモのそれは8~12個である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ
きくいも / 菊芋
[学] Helianthus tuberosus L.

キク科(APG分類:キク科)の多年草。北アメリカ原産で、日本には江戸時代末に渡来した。茎は高さ2.5~3メートル、太さ3センチメートル。葉は楕円(だえん)形、先はとがり、長さ20~30センチメートル、茎下部の葉は対生し、上部では互生する。茎や葉の表面に粗い毛がある。秋、茎の上部がよく分枝して多数の頭状花をつける。花は径4~8センチメートル、中央に黄褐色の管状花が集まり、黄色の舌状花がそれを囲む。地下に、ショウガに似た形の塊茎が多数でき、これを食用とする。また、植物全体を家畜の飼料にする。第二次世界大戦中および戦後、救荒作物として注目されたが、現在ではほとんど栽培されず、荒れ地などに野生化している。

[星川清親 2022年2月18日]

食品

塊茎の可食部の8割は水分で、糖質は15%、その半分以上は難消化性のイヌリンで、ほかはブドウ糖とショ糖である。煮たり、サラダとしてなまのまま食べるが、特有の臭気があって風味は劣り、一般には好まれない。酢漬け、みそ漬け、粕(かす)漬けなどにする。イヌリンはほかのデンプンより酸糖化が容易なので、飴(あめ)、アルコールの原料、アセトンブタノール発酵の原料にもされる。

[星川清親 2022年2月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ(菊芋)
キクイモ
Helianthus tuberosus; Jerusalem artichoke

キク科ヒマワリ属の多年草で,北アメリカ原産。もともとその塊茎をとるために輸入されたが,花を観賞するためにも栽培され,繁殖力が強いので各地で野生状態となっている。茎は高さ 2m前後になり,葉とともにあらい毛があり,ざらつく。葉は長楕円形で,縁にまばらな鋸歯があり,大きな3脈が目立つ。茎の下部では対生し,上部では互生に変る。秋,枝を多く出しヒマワリに似た頭状花をつける。直径は 7cm内外,周辺の舌状花は 10個以上あり黄色で,中心の管状花は黄褐色をしている。細い根茎の先端に肥大した塊茎ができる。塊茎は多量のイヌリンを含み果糖製造の原料にされ,また漬物にしたり煮て食用にすることもまれにある。

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百科事典マイペディア 「キクイモ」の意味・わかりやすい解説

キクイモ

北米原産のキク科の多年草。肥大した塊茎がイヌリンを含むため,果糖,アルコール製造の原料,家畜の飼料としてかつて栽培が奨励された。高さ1〜2m。葉は長卵形で茎の下部では対生,上部では互生し,あらい毛があってざらつく。9〜11月,舌状花と筒状花からなる径6〜8cmほどの黄色の頭花を開く。繁殖力が強く,いったん植えると絶やすことがむずかしく,現在は各地に帰化している。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「キクイモ」の解説

きくいも[根菜・土物類]

東海地方、岐阜県の地域ブランド。
主に恵那市岩村町で生産されている。岩村町には古くから自生していたが、1987(昭和62)年頃から栽培が本格化した。砂地の土壌が栽培に適していたため、量産できた。切り口が菊の花に似ていることから、きくいもと呼ばれる。味噌漬けや粕漬けなどに加工して販売される。収穫は11月。飛騨・美濃伝統野菜。

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栄養・生化学辞典 「キクイモ」の解説

キクイモ

 [Helianthus tuberosus].キク目キク科ヒマワリ属の植物の塊茎で,食用にする.主成分はイヌリンというD-フルクトースを主成分とする多糖.

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