凶作時にもある程度の収量が得られ,主食の代用となって飢餓をしのぐために栽培する作物。備荒作物ともいう。凶作のおもな原因には気象災害や病虫害などがあり,とくに冷害や干害は広い地域で被害が発生することが多いため,事態はより深刻となる。救荒作物はこのような不良な気象条件下でも,ある程度の収量をあげるものでなくてはならない。このために,低温に強く,しかも短い夏の間にも生育を完了することのできる生育期間の短い作物であること,また,日照り続きの乾燥時にも枯れないじょうぶな作物であることが要求される。しかも,いつ起こるかわからない気象災害に備えるためのものであるから,その栽培には主要作物を栽培することのできる肥えた条件のよい田畑を利用するわけにはゆかない。このため,やせ地や山間高冷地で,しかもあまり手間をかけずに栽培できる作物でなくてはならない。
このような条件を満たす救荒作物として,生育期間が短く,冷涼な地の夏でも稔実できるものに,ソバ,アワ,ヒエ,シコクビエなどがある。また,収穫物が土の中にあるイモ類は,乾燥や気温の変動に強い。サツマイモは,江戸時代前期には南九州で栽培されており,そこでは飢饉のときにも餓死者が少なかったことから注目され,同時代末期には救荒作物として全国に広まった。同種のものにジャガイモ,キクイモなどがある。
→飢饉
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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