本州中央部の太平洋側に位置する地方で,名称は五畿七道の一つである東海道に由来する。通常その範囲は愛知,岐阜,三重,静岡の4県を含むが,狭義には東海3県として,愛知,岐阜,静岡を指し,あるいは愛知,岐阜,三重の3県を指す場合もある。太平洋ベルト地帯の一翼を担う日本の表回廊的存在で,東海道新幹線,名神・東名両高速道路などの大動脈が通り,近代的産業の発達が著しい。都市化も高度に進んでおり,200万都市の名古屋市を中核とした都市圏である中京圏の影響が強い。地形的には飛驒,木曾,赤石の各山脈南部と両白山地,伊吹山地,鈴鹿山脈に囲まれた地域で,大井川,天竜川,木曾川,長良川,揖斐川,櫛田川など大小の河川が形成した沖積平野と,磐田原,三方原,高師原などの洪積台地からなる。糸魚川(いといがわ)-静岡構造線が静岡県中部を走り,さらに西南日本を内帯と外帯に大別する中央構造線が赤石山脈の西縁から豊川の流路に沿い,渥美半島,紀伊半島を横断する。
気候は温暖で冬季に快晴日数が多い東海式気候区を示し,降雪の多い北陸気候区とは著しい対照をなす。年降水量は平野部で2000mm以下,山地部で2200~2800mm,三重県南部では4000mmをこえる。農業の基盤をなしてきた稲作は,高度経済成長期以降,米の生産調整などにより省力化がすすみ,また受託(委託)栽培が主流となってきている。一方,渥美半島,静岡平野では施設園芸が盛んで,静岡県の牧ノ原,三方原などでは茶やミカンの栽培が行われる。林業は人工林率が高い木曾,天竜,三河の育成林地域で活発である。水産業はノリ,ウナギ,真珠などの養殖漁業や遠洋漁業がともに行われ,水産加工業も発達している。工業では,窯業・繊維などの伝統工業をもつ中京工業地帯と,楽器・織物・製糸業に特色のある静岡県の東海工業地域がつらなって京浜,阪神に次ぐ工業地域を形成し,特に名古屋市の機械,四日市市の石油化学,豊田市の自動車などの重工業が大きな比重を占めている。1990年代に入り,東海地方内で県域をこえた開発構想として,常滑沖に建設される中部国際空港(2005年2月開港)を核にした環伊勢湾時代の創造,中山間地域における新しいライフスタイルを求めた三遠南信(三河・遠江・南信濃)連携社会の構築など新しい動きが出はじめている。
執筆者:溝口 常俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
従来の自然地理区では静岡、愛知、岐阜3県をさすが、最近では名古屋大都市圏(中京圏)の形成によって三重県を含める場合が多く、愛知、岐阜、三重3県を「東海三県」というケースが多くなっている。中京圏、環伊勢(いせ)湾地域という場合がそれである。自然的・人文的地理区としては三重県を含めた東海4県をもって東海地方と規定するのが妥当である。地形は太平洋斜面の海岸平野と緩やかな丘陵台地が多く、気候は北陸式に対して東海式気候区に属し、気温は一般に温和でミカン、茶などが特産、海岸部には暖地性植物の自生地も多い。降雨は夏が雨期、冬が乾期で、冬季の快晴日数が多く豪雪現象は皆無である。交通史上では、古くから畿内(きない)、関東を結ぶ「東西交通の表回廊」として栄え、鎌倉街道、旧東海道のルートでもあった。明治以降は東海道線、新幹線が通じ、経済文化の中枢地帯として、太平洋ベルト地帯、東海道メガロポリスの一部となっている。
[伊藤郷平]
『藤岡謙二郎監修『中部地方』(1983・大明堂)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本列島を西南日本と東北日本に二分する地質構造線の糸魚川‐静岡構造線が走っており,その西側は飛驒,木曾,赤石の各山脈の高山域が卓越しているのに対して,東側は第三系を主とする低山地,丘陵と火山群からなる地帯を形成している。平野や盆地には,越後(新潟)平野や濃尾平野のように低湿地を含むもの,富山平野のようにゆるやかな扇状地式三角州をなすもの,東海地方の海岸部のように牧ノ原,三方原など新期の隆起性台地が発達するもの,甲府盆地,伊那盆地,松本盆地,長野盆地のように周辺の山地に大規模な扇状地を発達させているものなど変化に富んでいる。気候のうえでも,冬季に世界的な豪雪地帯で知られる日本海側と,冬季に温暖・快晴の日が続く太平洋側のように両極端の様相がみられる。…
※「東海地方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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