きばち(読み)きばち(英語表記)horntails

精選版 日本国語大辞典 「きばち」の意味・読み・例文・類語

き‐ばち

  1. 〘 名詞 〙 植物むくげ(木槿)」の異名。〔物類称呼(1775)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「きばち」の意味・わかりやすい解説

キバチ
きばち / 樹蜂
独脚蜂
horntails
woodwasps

昆虫綱膜翅(まくし)目広腰亜目キバチ科Siricidaeの昆虫の総称。世界に約90種、日本には7属13種が知られている。クビナガキバチ科とともにキバチ上科Siricoideaを形成し、キバチ亜科Siricinaeとヒラアシキバチ亜科Tremecinaeに分けられる。

 大きさは栄養条件によって変化するが、大形種が大部分で、体長2センチメートル以上である。体形円筒形で、腹端の節はとがっていて、雌では針状の長い産卵管をもつ。枯れ木や衰弱木に産卵し、幼虫は材中に穿孔(せんこう)して生活するので、樹木の害虫である。産卵時に腹腔(ふくこう)内にある袋に蓄えた木材腐朽菌の胞子を材に植え付けるので、樹木の損傷が激しい。幼虫はこの菌によって腐った材を食うと思われるが、真の食性は確かめられていない。普通は1世代1年かかるが、ときには2~3年かかることもある。

 幼虫の食性は、キバチ亜科では針葉樹ヒラアシキバチ亜科では広葉樹である。日本で被害のもっとも大きいものはマツ類に穿孔するニトベキバチであるが、いわゆる松くい虫の被害の陰に隠れて、その実態はよくわからない。オーストラリアニュージーランドでは、侵入種ノクチリオキバチが、日本の松くい虫のように、ラジアタマツに大きな被害を与えている。近年、日本でも外国から材木輸入が増大し、外来のキバチ類が発見されることが多くなっており、ときには屋内でみつかることもある。また、山林の労務者が減少してスギヒノキの植林地の手入れが不十分なため、ニホンキバチやオナガキバチが増え、磨き丸太などに被害が増えている。

[奥谷禎一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「きばち」の意味・わかりやすい解説

キバチ (樹蜂)
horntail

膜翅目キバチ科Siricidaeに属する昆虫の総称で,成虫は5~10月に出現する。ほぼ円筒形で細長く,雌の尾端に太い1本のとげがあり,強固な長い産卵管をもつ。雌はこの産卵管を木の中に深く刺し込んで産卵する。このとき,木材腐朽菌の胞子を卵とともに材中に植えつけるので大きな害を与えるといわれている。一般に林業の重要害虫として知られているが,庭園樹を加害することもあり,ときには鉛管を穿孔(せんこう)して通信事業に二次的な被害を与えることもある。また,海外では輸入材とともに外国産キバチ類の侵入することがときどき報告されており,日本でも報告があるので注意が必要である。日本に産するキバチ類は約15種で,このうちヒラアシキバチ亜科の種はサクラ,エノキ,カエデ,ニレなどに寄生し,キバチ亜科のハチはマツ,エゾマツ,モミ,スギなどの針葉樹を加害する。キバチ類の生活史はよくわかっていない。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「きばち」の意味・わかりやすい解説

キバチ
Siricidae; horntail; wood wasp

膜翅目キバチ科に属する昆虫の総称。中~大型のハチで,体は円筒形で腹部の基部にくびれがない。触角は糸状または棒状。頭部は胸部と同幅。腹部は長く,腹端に角状の突起があり,英名はこの特徴に由来する。雌は長いじょうぶな産卵管をもち,これを樹幹に突刺して卵を産むが,そのまま死ぬものが多く,その様子がちょうどハチが一本脚で立っているようにみえるので独脚蜂とも呼ばれる。幼虫は白いS字形の円筒状で,胸脚は痕跡的で,腹端に角状突起がある。樹勢の衰えた樹木や枯死したばかりの樹木に寄生し,材部に穿孔して食害する。日本にはヒラアシキバチ Tremex fuscicornis,オナガキバチ Xeris spectrum,ニトベキバチ Sirex nitobeiなど十数種が知られている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「きばち」の意味・わかりやすい解説

キバチ

膜翅(まくし)目キバチ科およびその近縁の数科の昆虫の総称。最も原始的なハチの一群で,体長10〜30mm。いずれも材木に穴をあける害虫で,成虫になるまでに数年を要する。主として北半球にかなりの種類があり,日本にも十数種を産する。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android