キバノロ(その他表記)Chinese water deer
Hydropotes inermis

改訂新版 世界大百科事典 「キバノロ」の意味・わかりやすい解説

キバノロ
Chinese water deer
Hydropotes inermis

偶蹄目シカ科の哺乳類。上あごにきば状に長くのびる大きな犬歯をもつ小型のシカ。きばはとくに雄では長く口から6cmも外に突出し,繁殖期に雄どうしのライバル闘争に使われる。体長80~100cm,体重10kg前後。前肢に比べて後肢が長く,腰が上がり,背中がウサギのように湾曲するのが特徴。体色は背側が赤褐色,腹面は白色中国の長江沿岸と朝鮮半島に分布する。草食性で,ヨシ原などの深い草原に単独,あるいはつがいですむ。きわめて用心深く,夜間茂みの中で行動し,驚くとウサギのように跳ねて逃げる。シカ類としては異常に多産で1産4~7子を生むとされてきたが,最近動物園で出産した雌の例によると1~2子がふつうで,まれに3子があるのみであった。乳頭は4。子には白斑がある。イギリス,フランスなどの一部の地域では,狩猟獣として移入されたものが野生化している。寿命は10~12年。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キバノロ」の意味・わかりやすい解説

キバノロ
きばのろ / 牙獐
Chinese water deer
[学] Hydropotes inermis

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。朝鮮半島、中国の揚子江(ようすこう)流域で、アシの茂みや低木地帯に生息する小形のシカである。体高45~55センチメートル、体重9~11キログラム。シカの仲間であるが角(つの)はなく、上あごの犬歯が牙(きば)状になっており、とくに雄では刀状に曲がった犬歯が口外に突き出ている。尾は短く、毛色は黄褐色。ひづめの幅はわりに広い。単独またはつがいですむことが多い。シカ類中では多産で、5、6月に1産1~3子を産み、ときに7子をみることもある。子の毛色は暗褐色で、背に小さな白斑(はくはん)がある。発情期は晩秋から初冬で、この時期の雄は牙を振るって闘争する。アシやその他の植物を食べ、寿命は飼育下で約10年である。

増井光子


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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「キバノロ」の解説

キバノロ
学名:Hydropotes inermis

種名 / キバノロ
科名 / シカ科
解説 / 原始的な種で、オスには角がないかわりに長いきばが発達します。単独で生活します。
体長 / 70~100cm/肩高45~55cm
体重 / 11~14kg
食物 / 草や木の葉
分布 / 中国南東部、朝鮮半島の、アシやカヤが密生する水辺
絶滅危惧種 / ☆

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キバノロ」の意味・わかりやすい解説

キバノロ
Hydropotes inermis chinese; Chinese water deer

偶蹄目シカ科。体長 75~97cm,体高約 50cm。雄の上犬歯が長く,牙状なのでその名がある。この歯は下顎の下方にまで達している。川岸のアシ原や低木地帯に小さな群れをつくってすむ。日中活動性。朝鮮半島,中国に分布する。

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