改訂新版 世界大百科事典 「キビナゴ」の意味・わかりやすい解説
キビナゴ (黍魚子/吉備奈仔)
blue sprat
Spratelloides gracilis
ニシン目ニシン科の海産魚。キミイワシ,ハマゴ,キミナゴとも呼ばれる。背部は青緑色,腹部は銀白色である。体側中央部に幅広い銀白色の帯が走り,これに重なるようにやや細い藍色の帯があり鮮やかである。ウルメイワシに似ているが,腹びれの位置が背びれから下ろした垂線上にあることで識別できる。南方系の魚で熱帯水域に広く分布し,日本では千葉県以南に分布する。ふつう,外海に大群をなして生息しているが,産卵期には内湾に入る。産卵期は九州から中部地域にかけては5~8月である。他のイワシ類と異なり,沈性の粘着卵を海藻などに産みつける。卵は海藻に粘着した一端が扁平になる。卵径は粘着層を含めると1.1~1.3mmで,粘着層を除くと0.93~0.97mmである。橈脚(じようきやく)類(コペポーダ)などの浮遊性プランクトンを摂食する。体長は全長10cmほどになる。新鮮なものは美味で,生食にするほか,煮干し,干物に加工する。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報