日本大百科全書(ニッポニカ) 「キュイ」の意味・わかりやすい解説
キュイ
きゅい
Цезарь Антонович Кюи/Tsezar' Antonovich Kyui
(1835―1918)
ロシアの作曲家、音楽評論家。幼時から音楽の基礎教育を受けたが、ペテルブルグ陸軍工兵学校を卒業。1856年「五人組」の理論家バラキレフと知り合い音楽活動に入るが、同時に母校の教授を務めた。フランス系リトアニア人である彼の作風は、ムソルグスキーら民族的色彩の強い他の「五人組」の作曲家とは異なり、『ウィリアム・ラトクリフ』(1869)をはじめ10曲のオペラにはマイヤベーアの影響が感じられ、ピアノ小曲や多数の歌曲はショパン風の叙情的旋律をもっている。しかし批評家として「五人組」の活動を支えた功績は大きい。なお、彼の作品でバイオリン独奏曲としてもっとも親しまれている『オリエンタル』は、24の小品からなる『万華鏡』(1893)のなかの第9曲にあたる。
[寺本まり子]