キリ油(読み)きりあぶら

改訂新版 世界大百科事典 「キリ油」の意味・わかりやすい解説

キリ(桐)油 (きりあぶら)
tung oil

とうゆ〉ともいう。アブラギリ植物種子核油。実際の採油には,ニホンアブラギリ(生産地は北陸,山陰,南関東),シナアブラギリ中国),カントンアブラギリ(中国南部)の3種が用いられる。搾油は,まず成熟果実を発酵,粉砕して種子を分離し,乾燥後温圧法によって行われる。通常2番しぼりまで行い,種子180lから約3~3.3lの油が得られる。代表的な乾性油で,主成分はα-エレオステアリン酸(80%),およびオレイン酸(15%)のグリセリドであり,そのほか少量のパルミチン酸およびステアリン酸グリセリドを含有する。乾燥性は,中国産キリ油のほうがニホンアブラギリのものよりもやや速い。古くから油紙雨合羽用などに使用されていたが,近年は工業用用途として,ペイントワニスリノリウム,印刷用インキ,焼付塗料に広く用いられている。使途亜麻仁油と競合する。日本の需要の大半は中国から輸入されている。
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化学辞典 第2版 「キリ油」の解説

きり油
キリユ
tung oil

アブラギリの種子から圧搾法によって得られる乾性油主産地は中国で,日本でも産する.中国種のものを支那きり油または単にきり油,日本種のものを日本きり油といい,前者のほうがやや乾燥性にすぐれている.主成分エレオステアリン酸およびオレイン酸グリセリドで,有毒成分も含有するので食用にはならない.ペイント,ワニス,油紙,油布,リノリウム製造などに用いられる.

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百科事典マイペディア 「キリ油」の意味・わかりやすい解説

キリ(桐)油【きりあぶら】

〈とうゆ〉とも。アブラギリ属の植物の種子から採取した乾性油。日本ではアブラギリ,シナアブラギリが栽植されている。エレオステアリン酸およびオレイン酸のグリセリドが主成分で,乾燥性が特に強い。古くから油紙,雨合羽などに使われ,ペイント,ワニス,リノリウムなどの製造にも用いられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キリ油」の意味・わかりやすい解説

きり油
きりゆ
tung oil

「とうゆ」ともいう。油ぎりの種子から得られる代表的乾性油。塗料,リノリウム,油紙,唐傘などの製造に利用される。主成分はトリエン構造をもつα-エレオステアリン酸で,約 60~80%を占める。乾性油の中では比較的乾燥性,反応性が高い。

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世界大百科事典(旧版)内のキリ油の言及

【アブラギリ(油桐)】より

…果実は直径2~2.5cmの扁球形,鈍三稜のある蒴果(さくか)で,中に大型の3個の種子を含む。 種子を搾って得られる油がキリ油で,α‐エレオステアリン酸を主成分とするすぐれた乾性油である。かつては灯油,油紙,雨合羽,和傘などに用いられ,今日でもペイント,ワニス,印刷用インキ,リノリウム,焼付塗料等に利用される。…

※「キリ油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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