キントキダイ(読み)きんときだい(その他表記)brownspot bigeye

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キントキダイ」の意味・わかりやすい解説

キントキダイ
きんときだい / 金時鯛
brownspot bigeye
red bulleye
[学] Priacanthus macracanthus

硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。青森県以南の太平洋、北海道南部以南の日本海、東シナ海、朝鮮半島南岸、台湾、オーストラリア北部、インドネシアなど西太平洋とインド洋に広く分布する。体は長楕円(ちょうだえん)形で側扁(そくへん)し、体高は体長のおよそ3分の1。尾柄(びへい)は細長い。目は大きく、眼径は吻長(ふんちょう)より長い。口は大きく、著しく上を向き、下顎(かがく)は上顎より突出する。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも同様の歯帯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部に大きな棘(きょく)が1本あり、後方へ突出する。鰓耙(さいは)は上枝に5~7本、下枝に19~22本。頭部と体は小さくてはがれにくい櫛鱗(しつりん)で覆われる。側線有孔鱗数は66~83枚。背びれは10棘13~14軟条で、基底長が長く、棘部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がない。臀(しり)びれは背びれ第8棘の下方から始まり、3棘14~15軟条。腹びれ胸びれより前方にあって胸びれよりはるかに大きい。尾びれの後縁はほぼ直線的である。体色は淡赤色で、腹部は淡い。背びれ、臀びれ、腹びれの鰭膜(きまく)に数列の黄色の小円斑(えんはん)が散在する。水深80~120メートルの沿岸の岩礁近くの砂泥底にすみ、小形のイカ類、魚類、カニ類、オキアミ類などを食べる。産卵期は5~8月で、卵径0.7~1.0ミリメートルの卵を産む。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長1.38ミリメートルで、体長2.5ミリメートルの仔魚は頭、目、口が著しく大きい。後頭部と前鰓蓋骨の隅角部から巨大な棘が突出する。1年で尾叉長(びさちょう)9.7~18.1センチメートル、2年で14.6~21.4センチメートル、4年で21.7~30.4センチメートルほどに成長する。海域によって成長差が大きい。成長に伴って雌の割合が高くなることから性転換の可能性が示唆されている。全長40センチメートルに達する。底引網延縄(はえなわ)、釣りでやや多量に漁獲され、煮つけ、塩焼き、フライ、干物、練り製品の原料などにする。長崎県ではアカメといって珍重する。

片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「キントキダイ」の意味・わかりやすい解説

キントキダイ (金時鯛)
Priacanthus macracanthus

スズキ目キントキダイ科の海産魚。本州中部以南の西部太平洋,インド洋に広く分布している。南日本ではふつうに見られ,神奈川県三崎でキンメ,和歌山県でキントキ,高知県でキントウジまたはカネヒラ,福岡県でウマヌスット,鹿児島県でセマツダイと呼ばれる。全長30cmに達する。体色は淡紅色で,背びれ,しりびれ,腹びれに暗黄色の斑点がある。体は側扁し,長楕円形をしている。口は大きく,上方を向いている。眼は大きい。各ひれはよく発達している。うろこはたいへん小さい櫛鱗(しつりん)。沿岸のやや深い砂泥底にすみ,魚類や甲殻類を食べている。夜行性であると考えられている。底引網や釣りによって漁獲される。食用になり煮付けなどで利用されるが,肉質は軟らかく,美味ではないといわれる。キントキダイ科Priacanthidaeには,日本からはクルマダイ,チカメキントキ,ホウセキキントキなど7種が知られているが,ほかに未調査のものがいると考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キントキダイ」の意味・わかりやすい解説

キントキダイ
Priacanthus macracanthus

スズキ目キントキダイ科。全長約 30cmになる。体は長楕円形で,側扁する。眼は大きい。体色は鮮かな赤色で,腹部は淡色。背鰭,臀鰭,腹鰭に黄褐色の小斑点がある。鱗は小さいが粗雑。肉食性,また,夜行性。南日本を含む西太平洋,インド洋に広く分布する。底引網や釣りで漁獲される。食用で,煮つけ,塩焼きなどにされるほか,練製品にも利用される。

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