キーロフ(読み)きーろふ(英語表記)Сергей Миронович Киров/Sergey Mironovich Kirov

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キーロフ」の意味・わかりやすい解説

キーロフ
Kirov, Sergei Mironovich

[生]1886.3.27. ウルジュム
[没]1934.12.1. レニングラード
ロシアの革命運動家,ソ連初期の共産党指導者。 V.I.レーニン弟子,I.スターリン戦友といわれていた。 1904年カザン工業技術学校卒業。 05年ロシア社会民主労働党に入党ボルシェビキに属し,鉄道ストライキの指導などで何回か逮捕された。 17年の十月革命ではペトログラード (現サンクトペテルブルグ) で活動。国内戦ではアストラハン臨時革命軍事委員会議長,南方軍集団革命会議議員などとしてデニキン軍掃討作戦に参加した。 21年党中央委員候補,23年党中央委員。 25年からレニングラードでスターリンの指導体制確立のため尽力し,26年党政治局員候補,30年政治局員,34年中央委員会書記となったが,34年 12月暗殺。彼はスターリン派の有力者で国民の人気も高かったが,1930年代初期の政策をめぐってスターリンと対立したためスターリンの指図によって暗殺されたとの見方もあり,真相は不明である。キーロフの暗殺はスターリンの大粛清合図となった。

キーロフ
Kirov

1934年までビャトカ Vyatka。ロシア西部,キーロフ州の州都。カザンの北約 320km,ビャトカ川上流部左岸に位置する河港都市。 1181年ノブゴロドの商人が東方との交易のために建設,フルイノフ Khlynovと呼んだ。 1489年モスクワ大公国領に入った。 1781年ビャトカと改称され,行政中心地となったが,あまり発展せず,長い間流刑地とされていた。ロシア革命後工業が発展し,現在,機械 (工作機械,農業機械,洗濯機) ,測定器具,木材加工,マッチ,皮革製靴食肉加工などの工業がある。教育,農業,工科の各大学,ロシアの作家 A.I.ゲルツェン流刑囚として市に住んでいたときに設立した図書館などがある。市内には 1689年建造のウスペンスキー大聖堂をはじめ,17~19世紀の建築記念物が多数保存されている。鉄道交通の要地で,ペルミ,コトラス,ボログダニジニーノブゴロド (旧ゴーリキー) の各方面へ鉄道が通じている。人口 47万3668(2010)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キーロフ」の意味・わかりやすい解説

キーロフ(ロシア連邦)
きーろふ
Киров/Kirov

ロシア連邦西部、キーロフ州の州都。ブヤトカ川の川岸にある港市。1934年までブヤトカVyatkaとよばれた。人口46万6100(1999)。キーロフ州の行政、経済、文化の中心地で、第二次世界大戦中およびそれ以降に工業発展が著しかった。主要な工業は、機械(工作機械、農業機械、電気洗濯機)、化学(タイヤ、合成建築資材)、非鉄金属加工、人工皮革、皮革・毛皮製品製造、家具製造業である。また玩具(がんぐ)の製作も行われている。14世紀より知られ、最初フリイノフHlïnovとよばれたが、1781年ブヤトカと変わり、行政中心、皮革加工、製材などの都市であった。流刑地でもあり、革命家で作家のゲルツェンも当地で流刑生活を送った。市内に17~19世紀初めまでの建築記念物が保存されている。教育大学、農業大学、工科大学、郷土博物館、美術館、ドラマ劇場、人形劇場などの教育・文化施設がある。鉄道の要地でもあり、モスクワ、ペルミ、ニジニー・ノブゴロド、コトラスと鉄道で結ばれている。

[中村泰三]


キーロフ(Sergey Mironovich Kirov)
きーろふ
Сергей Миронович Киров/Sergey Mironovich Kirov
(1886―1934)

旧ソ連共産党幹部。ロシア北部のビャトカ県(現キーロフ州)出身。1904年入党。第一次ロシア革命期にはシベリアで活動、のちカフカスに移り、北オセチアのウラジカフカスで十月革命を指導。内戦期にはアストラハン防衛戦で活躍した。23年党中央委員、26年レニングラード党組織の第一書記、30年政治局員に昇進し、34年の第17回党大会のころまでに党内でスターリンにかわりうる人物と目されるに至ったが、同年12月に暗殺された。その真相は謎(なぞ)に包まれたまま、事件は旧反対派の弾圧のために利用され、大粛清の幕開きとなった。

[原 暉之]

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