改訂新版 世界大百科事典 「クキバチ」の意味・わかりやすい解説
クキバチ (茎蜂)
stem sawfly
膜翅目クキバチ科Cephidaeに属する昆虫の総称。腹部第2節がやや細くなっているため,一見ヒメバチ類のように見えるが,前胸背板が大きく,その後縁が直線状である点で区別できる。15mm内外の種類が多い。この科の昆虫は全北区に多く分布し,日本からは10種報告されている。このうちバラクキバチSyrista similisは,バラの新梢に産卵する害虫で,年1回,4月下旬より5月中旬にかけて成虫が出現する。雌成虫は,バラの太めの新梢に頭部を地表に向けて位置し産卵する。この場合,産卵に先立ち新梢のまわりにらせん状に深い傷痕をつけるため,産卵部より先端のほうはしおれる。孵化(ふか)した幼虫は,まずしおれた部位へ食入し,次いで反転してしおれていない基部のほうへ食入し,茎内で老熟し繭をつくる。これはクキバチ科の昆虫に共通した習性のようである。ほかには,アカガシに寄生するアカガシクキバチ,チシャノキを加害するチシャノキクキバチなどが知られている。
執筆者:富樫 一次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報