改訂新版 世界大百科事典 「クマワラビ」の意味・わかりやすい解説
クマワラビ
Dryopteris lacera(Thunb.)O.Ktze.
北海道の奥尻島と本州以南の暖地にふつうにみられるオシダ科の多年生シダ植物。常緑性で,太い根茎から数枚の葉を叢生(そうせい)する。葉は淡緑色で,2回羽状複生,楕円形から倒卵形で,長さ30~60cm。葉柄には淡褐色の大型鱗片が密生し,熊ワラビの和名は,その印象に基づく。中軸や羽軸には細くて小型の鱗片が,ややまばらに残る。葉脈は葉の表面で著しくくぼむ。胞子囊群は上部の羽片につき,この部分の葉面は退化・縮小する。胞子は6月頃に熟し,胞子囊群をつけた羽片は夏の終りには枯れることが多い。包膜は円腎形で,全縁から軽い歯牙縁,若い葉ではこうもり傘のように胞子囊群をおおう。朝鮮にも知られており,台湾にはよく似たものがある。日本産の近縁種にオクマワラビD.uniformis(Makino)Makinoがあるが,葉はふつう単羽状深裂,側羽片は数多く12~20対,鱗片は濃色で,胞子囊群がつく羽片はほとんど退化・縮小しないこと,葉脈が葉の表面であまりくぼまないことなどにより区別できる。またクマワラビは石灰岩地帯でしばしば群生するが,オクマワラビはむしろ花コウ岩地域に多い。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報