クリッパー船(読み)くりっぱーせん(英語表記)clipper ships

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリッパー船」の意味・わかりやすい解説

クリッパー船
くりっぱーせん
clipper ships

19世紀前期に出現した快速航洋帆船。正確に定義づけられているわけではないが、1832年にアメリカ、ボルティモアのマッキムIsaac McKimが妻の名にちなんだ高速帆船アン・マッキム号Ann McKim(約450トン、長さ43メートル)を建造したのがきっかけとなり、ボルティモア・クリッパーとよばれた。船体を細くし、船首の水切りの部分を水面に対して大きく前に傾斜させ、凹形に湾曲させたクリッパー船首とし、マストを異常に高くし、ヤード(帆桁(ほげた))をできるだけ長大にし、船の安全よりも高速に重点を置いて建造した帆船で、帆の面積は可能な限り展帆した点に特徴があった。

 小型船のアン・マッキム号にヒントを得て、ニューヨークの造船家グリフィスJohn W. Griffithsが1845年に新しく設計したレインボー号Rainbow(750トン、水線長さ47メートル、幅9.6メートル)が大型航洋帆船としてのクリッパー船の初めとなった。当時の貿易事情からして、中国からイギリスへ茶を輸入するのに新鮮さを競ったことから、ティー・クリッパーが生まれ、アメリカでは西部金鉱が発見されたことから、ケープホーン迂回(うかい)する快速航海が要求され、ホーン・クリッパーが生まれ、オーストラリアから羊毛をイギリスに運ぶ航路においては、市場競争のため快速輸送が要求されてウール・クリッパーが生まれるなど、クリッパー船による帆船黄金時代が出現した。しかし1869年にスエズ運河が開通してからは、汽船の航海が計画どおりにできるようになったため、世界の流通機構の近代要求に対して予定どおりの航海のできない帆船は、その地位を汽船に譲らざるをえなくなり、しだいに第一線から退いていった。

[茂在寅男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クリッパー船」の意味・わかりやすい解説

クリッパー船
クリッパーせん
clipper ship

19世紀中頃に活躍した快速帆船。高速を得るため比較的細長い船体,水切りのよい船首 (クリッパー型船首) ,広い帆面積を有するシップ型帆装などを特徴とする。カリフォルニアのゴールドラッシュに際して北アメリカ東岸からホーン岬を回って西岸移民を運んだホーンクリッパー (カリフォルニアクリッパー) ,中国から茶をヨーロッパに速達したティークリッパー,オーストラリアの羊毛積取りに従事したウールクリッパーなどが有名。帆船による海上交通の最後の黄金時代を形成したが,汽船の普及で 19世紀末までに大部分が姿を消した。クリッパー型船首は船首の前面が直線となった直船首に対して,水切りをよくするため上部が前方に張出した形をしており,現在でも漁船ヨットなどに用いられている。

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