ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレチアン・ド・トロア」の意味・わかりやすい解説
クレチアン・ド・トロア
Chrétien de Troyes
[没]1190頃
フランスの叙事詩人。騎士道物語に新境地を開いた。作品から知る以外その生涯は不明だが,聖職者の教育を受けたらしい。マリー・ド・シャンパーニュらの庇護を受け,1158年頃からオウィディウスの作品の翻案などで創作を始めた。その後ブルターニュ物語,特にアルチュール (アーサー) 王と円卓の騎士の物語に題材をかりた一連の作品,『エレックとエニード』 Érec et Énide (1170頃) ,『クリジェス』 Cligès (76頃) ,『イバン,または獅子の騎士』 Yvain ou Le Chevalier au Lion (77~81) ,『ランスロ,または荷馬車の騎士』 Lancelot ou Le Chevalier à la charrette (79~81) ,神の秘跡の象徴「聖杯」をめぐる『ペルスバル,または聖杯物語』 Perceval ou Le Conte du Graal (81頃) を書いた。背景は驚異と超自然に満ちた伝説の世界で,幻想と現実が入り交り,愛と冒険が描かれ,特に『ランスロ』には女性崇拝と奉仕の宮廷風恋愛の理想が盛られている。
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