インドネシアのポピュラー音楽。この名は輪にたくさんの鈴をつけて振り鳴らす楽器クロンチョンに由来する。ほぼ3世紀にわたる歴史を持つ。主としてジャワ島の伝統的な歌をもとにして,ポルトガルやアラビアのポピュラー音楽の要素を取り入れ,インドネシア語で作曲されたものである。伴奏楽器の基本的な編成は,バイオリン,フルート,ギター,バンジョー,クロンチョン,チェロ,コントラバス等であり,ジャワ古来のガムランや民俗音楽のリズムを取り入れている。ジャワ島の都会に住む流しの歌い手や演奏家がその担い手であり,作曲者の不明な曲が多い。20世紀初めころからクスビニらが出て,曲の記譜や放送,録音等が行われるようになり,インドネシアのみならず,外国にも知られるようになった。また,曲の形式や伴奏のオーケストラにはさまざまなスタイルがあり,《モレスコ》《ブンガワン・ソロ》《ジャウ・ディマタ》などが有名である。
執筆者:田村 史子
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… 植民地のポピュラー音楽の最も早い例は,スリランカとインドネシアに見いだされる。16世紀初頭にポルトガルの軍隊が南アジアに侵入したあと,彼らの音楽と現地の音楽との接触によって,少なくとも現在知られているところではスリランカでカフリンナkaffrinnaとバイラbaira,インドネシアでクロンチョンという混血音楽が生まれ,いずれも今日まで大衆に愛好され続けている。スリランカの例では,ポルトガル兵の中にモザンビークで徴発されたアフリカ人が含まれていたため,カフリンナとバイラにはアフリカ音楽の要素も混入していたと報告されているが,インドネシアのクロンチョンの場合はその点は明らかではない。…
※「クロンチョン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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