六訂版 家庭医学大全科 の解説
クローン病に伴う肛門病変
クローンびょうにともなうこうもんびょうへん
Crohn's disease-associated anal lesion
(直腸・肛門の病気)
どんな病気か
クローン病とは、小腸の末端部を好発部位として、小腸から直腸のどの部分にも炎症や潰瘍が起こる、免疫異常を伴う原因不明の病気です。症状は腹痛、下痢、発熱、口内炎、体重減少、貧血、非定型的肛門病変などです。主として10代から30代の若い人にみられます。
このクローン病の70~80%に肛門病変が合併します。
一般に大腸型や小腸大腸型に多く、直腸にクローン病変を認める場合には肛門病変は必発です。したがって、肛門病変をみてクローン病の診断に至ることも少なくありません。
原因は何か
クローン病そのものによる肛門病変は、裂肛、下掘れ潰瘍、浮腫状皮垂などで、これらを一次性病変と呼びます。ここから感染や瘻孔形成などの変化が加わると、複雑痔瘻、肛門周囲膿瘍、皮垂、肛門狭窄(きょうさく)などを示すようになり、これらを二次性病変と呼びます。
裂肛・肛門潰瘍は、深いわりには痛みが少ない傾向があります。クローン病の裂肛は、深く掘れ込み、不整形で多発しやすく、
検査と診断
肛門部の所見からクローン病を疑った場合には、詳細な問診とていねいな診察を行うと同時に、消化管内視鏡検査や小腸造影などを積極的に行います。特徴的な消化器症状や、大腸、小腸の潰瘍やアフタ、腸管の狭窄、
肛門病変の組織検査はあまり有用ではありません。
治療の方法
肛門病変に対しては、腸管を休めるような栄養療法(成分栄養剤)、薬物療法(副腎皮質ホルモン、サラゾスルファピリジン、メサラジン、免疫抑制剤)などの保存的療法を優先します。これによって病変および症状の改善が認められない場合には、インフリキシマブ注射や白血球除去療法、外科的治療(切開、シートン法)を検討します。
裂肛は、クローン病の治療を含む保存的治療で満足すべき成績が得られます。単純型
保存療法や手術で改善せず、腹部病変や肛門病変が複雑な時は、一時的に人工肛門を作ることもあります。
病気に気づいたらどうする
クローン病と診断のついている人は担当医に、初めて肛門病変に気づいた人、または複雑な痔瘻をもっている人は、クローン病に詳しい医師(内科医、外科医)、肛門専門医にかかってください。
松田 保秀
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報